ゆるゆるOblivion

Oblivion妄想RP日記です。渋親父率高いので、加齢臭漂ってます

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死者への祈り

~死者への祈り~ 6:「死者への祈り」



imperialcityの西の橋近くに、大きな霊園がある。

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川沿いにあるその霊園は都市に隣接しているにも関わらず、とても静かで、神聖な空気が立ち込めていた。
霊園内は綺麗に整備されており、風光明媚なこの場所は、散歩をしたりくつろぐためのちょっとした穴場となっていた。


Azazelは月命日である17日は、常に午前中で仕事を終えることにしていた。
亡き妻の墓参りのためである。

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彼は綺麗な花が添えられた墓の前に跪き、愛しそうに墓標に刻まれた文字を見つめていた。
暫く、墓前で思いを馳せていると、後方で足音がした。
振り返るとそこにはMiaが立っていた。


「何故、ここへ・・・」


彼女にこの場所のことを話したことも、妻の墓のことも話したことはなかった。
月命日に毎回赴いていることも。

彼は驚き、戸惑いながらもゆっくり立ち上がった。


「マリア・エレーナに聞いたの」
「・・・私もいい・・・?」

「ああ」


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Miaはおっさんと入れ違いに墓前に立ち、花を添えた後、手を合わせた。
事を終えると、彼女は顔を上げ、おっさんに向き直り

「ありがとう」

と、礼を述べた。


「いや、こちらこそありがとう」

彼はMiaの行為に素直に感謝していた。
そして、少し言い辛そうに昨日のことを持ち出した。

「・・・心配したぞ。どこをほっつき歩いてたんだ」

「マリア・エレーナの所へ行ってたのよ」


二人はゆっくりと歩き出した。
なんとなく、墓前近くでこの話をするのがためらわれたからだ。
聞かせたくないというのが、正直な気持ちだ。

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「色々と話を聞いたわ」

「そうか」

「あなたのことも」


おっさんは何も言わない。


「・・・ごめんなさい。昨日のこと、凄く後悔してる・・・」
「もう、勝手なことはしないわ」

「わかってくれれば、それでいい」


二人はゆっくりとどこへ行くわけでもなく、歩き続けている。
ただ、互いに歩調は合わせていた。


「私も少し言い過ぎたかもしれない。」
「すまなかった」

「ううん、いいの。いつものことだもの、気にしてないわ」
「喧嘩、しなれてる筈なのにね・・・」

「・・・全くだ・・・」


彼女は霊園を見渡せるよう中央にある高台の方へと歩いて行った。
ふと、彼を見上げ、近くにあるベンチを示す。
二人はそこに腰を降ろした。

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Miaはこの霊園に来たのは初めてだった。
座って周囲を見渡すと、とても美しい景色が広がっていることにすぐ気がついた。
小鳥のさえずりが聞こえ、木漏れ日が溢れている。
霊園独特の空気がとても神聖に感じられ、呼吸をするごとに、体内が浄化されていくような気がした。

「・・・いい所ね」

「ああ」


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噴水の近くで、この霊園の管理を行っている聖職者がベンチに座って読書をしている。
少し離れた所で、同じような聖職者が落ち葉を箒で掃いていた。
のどかだ。
二人は暫く黙って霊園の空気に触れていた。
とても居心地が良い。


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「ねえ、Azazel」

「なんだ?」

「・・・奥さんってどんな人?」

Miaは少しためらいながら聞いてみた。
彼は少し考えた後、静かに口を開いた。


「・・・・美しい人だったよ。笑顔が可愛いくて、とても優しかった。彼女の周りは日溜りみたいにいつも暖かいんだ」
「素晴らしい女性だったよ」


Azazelは悲しげな笑みを湛えていた。

いつもは眉間に皺を寄せて厳つい表情をしているが、本来の彼は優しい表情を浮かべることもできるのだろう。
いつの頃からかそんな感情を表に出すことも減ってしまっていた。
愛情に満ち溢れた眼差しからして、亡き妻への思いはとてつもなく深く、今となってはこの表情もそんな彼女にのみ対して向けられるものなのかもしれない。

Miaは彼のその表情に吸い込まれるように釘付けになっていた。

息が詰まる程に心が苦しい。
彼の悲しみがこちらにまで伝わり、同じようにせつなさで胸が一杯になった。


「そっか・・・・」
「まだ・・・奥さんのこと、想って・・・る・・・のよね・・・?」


恐る恐る聞いてみた。
答えは聞かなくても分かるような気もするが、一応、念の為に聞いておきたかった。


「・・・ああ、想ってるよ」

「そっか・・・」


Miaが想像していた通りの答えが返ってきた。
彼女は残念そうに俯いた。
そして、ジャリジャリッと右足で地面を擦りながら、自分ではどうすることもできないことだと言い聞かせようとしていた。

「それじゃあ、無理だよね・・・」

「無理?何がだ?」

「・・・マリア・エレーナは、まだあなたのことを」

「・・・あぁ・・・」


彼女の話を聞いて昔のことを思い出した。
色々とあったが、マリア・エレーナは自分に随分と熱心に尽くしてくれた。
彼は感謝はしていたが、それ以外の感情は持ち合わせていなかった。


「彼女には申し訳ないと思っている」
「だが、あんな美貌を持つ女性を私が独占するわけにもいかないだろ。光栄だが、身を引かせてもらったんだ」

「詭弁ね」

「ああ、全くな」

「もったいないとは思わないの?」

「思うよ」

「じゃあ、どうして・・・?」


拒む理由はわかっていても、どうしてもマリア・エレーナの気持ちをわかってほしかった。
なんとか彼の心を解きほぐし、うまくいく方法はないかとMiaは模索していた。
マリア・エレーナは大事な友達なのだ。


「もったいないからさ。」

「??」


Miaにはおっさんの言葉の意味が理解できなかった。

「彼女は幸せになれるよ。私ではない、誰かとな。つまり、そういうことさ」

「・・・あなたといたら、もったいない、ってこと??」

彼は苦笑しながら頷いた。
わかったような、わからないような顔つきをしているMia。
そんな彼女を見て、元気そうで良かったと、何故か今、このタイミングで彼は思った。
Azazelは微かに笑っているようだった。


「・・・そう。そこまで言うなら、仕様が無いわよね・・・」

もう、自分の出る幕ではない。
おそらく二人の間ではすでに済んだ話のはずだ。
これ以上自分がその話を持ち返して拗れさすのも気が引ける。
元々自分には関係のない話なのだから。
Miaは大人しく引き下がった。

「意外とあなたって、モテるのね・・・」

ボソっと呟いた。

「みんな変わってる」



「君も十分、変わってると思うが?」


Hassilder伯爵を恋愛対象とみなしている彼女は、かなりの変わり者だとおっさんは思っている。
趣味は人それぞれだ。
否定する気はないが、同意する気もなかった。


「あら、そんなことないわよ。私はいたって普通よ」

「どうだか・・・」


彼はどうでもよさそうにそう言うと、空を見上げながら軽く息をついた。
Miaはおっさんの横顔をじーっと見つめていた。
彼女にはもう一つ訊ねてみたいことがあった。
その質問もかなりしにくい部類に入るので、さっきからどうしようかと悩んでいるのだ。
ただ、なんとなくだが、今のおっさんならどんな質問にも答えてくれそうな気がした。
いつもより雰囲気が柔らかいのだ。
彼女は意を決した。

「あー・・・、えっと、もう一つ聞きたいことがあるんだけど・・・」

「なんだ、まだキツイ話をするつもりか?」

「うーん・・・、どうだろう・・・」


彼はプライベートに踏み込んだ話は常に避ける人間だ。
それなのに何故だろう、今日は口が軽いような気がする。
普段なら決して彼女に話すような内容のものではないのに、彼は素直に答えていた。
自分でも不思議に感じているくらいだ。
おそらく、昨日の喧嘩が起因しているのだろう。
罪悪感を多少なりとも感じており、それを償おうとしている心の現われかもしれない。


「・・・マリア・エレーナがね、あなたが私に特別厳しいのは、娘さんと私を重ねて見ているからじゃないかっていうの」
「そうなの?」

Miaはおっさんの横顔を相変わらず見つめていた。
彼はこちらを一瞥したが、再び景色に視線を戻し、表情を変えぬまま、落ち着いた声色でそれを否定した。

「それはない。」
「君と娘は似ても似つかないよ」

Miaの方に向き直り、少し真剣な面持ちで話を続けた。

「まあ、自分勝手で向こう見ずだという共通点はあるがな」


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おっさんはマリア・エレーナがMiaにそのことを告げたことに対して考えなければならなかった。
彼女がそう言うということは、自分は無意識の内に本当にMiaに厳しく当たっているということだからだ。
その理由を彼は吟味してみた。
ふと、昨日の出来事が脳裏を過ぎる。

たった1人で残党を片付け、何事もなかったように去っていく彼女の後姿。

あの時、自分は感じた筈だ。
彼女の危うさを。
あの時の彼女の顔には、全く表情がなかった。


「君に少し厳しくあたるのには、理由がある」
「その前に、私には今の今まで、その自覚はなかったということを覚えておいてくれ」

「なかったんだ。まいっちゃうな・・・」

Miaはちょっと呆れた調子で肩をすくませた。



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「戦士ギルドで君と一緒に行動するようになってから、かれこれ1年半くらいか。早いものだな。」
「君には、この世に未練というものがあるのだろうか・・・?」


唐突な質問。

Miaは考えてみたが、うまく頭の中を整理できず、何も答えられなかった。
答えられない彼女を見て、おっさんは自分の思っていたことが正しいものだと感じた。

「君には過去の記憶がない。だからなのかもしれないが、君自身をこの世に引き止めておく理由がないんじゃないかと常々私は思っていた。
だから、いつも捨て身で、刹那的なのではないかとね」


Miaは黙って話を聞いていた。


「君はとても危うい存在だ。自分には何も残されてないからと、あっさり死を受け入れてしまうような気がする。
記憶がないから、欲望も、大切なものも、何もない。
少しずつそういったものが築かれつつあるのかもしれないが、まだ不完全だ。


・・・だから私は、ただひたすらに、心配なのだ」



おっさんはMiaの反応を伺っていた。
彼は厳しいながらも、不安と、優しさが入り混じった、とても複雑な視線で彼女を見つめていた。
Azazelは本気で彼女のことを心配しているようだった。
そんな風に思われていたとは露ほども知らず、Miaはちょっとドギマギしてしまった。

彼は私以上に、私の事を考えてくれている。

しかもかなり真剣に。


Miaは基本的に楽天家だ。
彼の言うようなことが自分に当てはまるのか、全く見当もつかない。
自分の中に、知らず知らずの内にそういう要素が生まれていたのだろうか?
よくわからなかった。

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「ま、まあ、確かに未練はないけど、戦いの中に身を投じている人間なら、誰しもそうなんじゃない?」

「君は不思議に思わないのか?その若さで、その腕前。さらには戦闘後の冷静な対応と感情の無さ。
かなりの経験を積んだ兵士でも難しいのに、君はそれらを見事に体得している。」

「私はきっと、以前はどこかの優秀な戦士だったのよ。・・・だから、あなたが言うように、命というものに無頓着なのかも」
「・・・心配してくれてるのはありがたいけど、私はそんなに脆くないわ。確かに、今の私には何もないけど・・・」

彼女は言葉を続けた。

「だけど、少しずつだけど、大事なものが増えてきているのは確かよ。
私はそれを、とても幸せに感じているの」


まだ芽が出始めたばかりではあるが、彼女はそれを大切に育てて生きたいと願っていた。
それを育む楽しさも、彼女は学びつつある。


「あなたが危惧しているような出来事は起きないわ。未練はないけど、死にたいと思ってるわけじゃない。
むやみやたらに自分の命を粗末に扱ってるわけではないのよ。いざとなったら、捨てる覚悟はあるけど」

彼女は少し明るい表情をしながら、陰鬱な彼を見た。
思わず苦笑してしまう。
何故彼は、こんなに困った顔をしているのだろう。


「こんな言い方じゃ、あなたを不安から解放させることは出来なさそうね。」
「大丈夫よ、心配ないわ。私は平気よ。強いんだから、あなたが気に病むことは何もないのに」

「確信が持てるまで、油断することはできない」


あっけらかんとしている彼女とは裏腹に、彼はまだMiaのことを疑っていた。
Miaにはその自覚がないということが自分には手に取るようにわかるからだ。
病が知らず知らずの内に進行していき彼女の体を蝕むことがないよう、日々、見守ってやらねばならない。
彼はそれを自分の責務として課しているようだった。


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「じゃあ、あなたの気が済むまで観察してちょうだい。徒労に終わると思うけどね」
「それと・・・」

Miaは言葉を付け加えた。

「私があなたの言葉で、あなたが思っている以上に傷つきやすいということも忘れないでね」

「・・・わかった。気をつけよう」


Miaは満足したように息をついた。
今思いつく限りの言いたいこと、聞きたいことを、彼にぶつけることができた。
そして、彼はそれに素直に答えてくれた。
彼が自分の事を心配しているということもわかった。
それはとても意外なことだったが。

Miaは彼に甘えたくもないし、自分の弱みも見せたくないと思っている。
しかし、甘えて頼ってしまう自分がいることにも、気付いていた。
そして、傍にいてくれるだけでとても安心できることにも。
これは大分前から感じていたことだ。
隣にいる無愛想で人相の悪いおっさんは、自分にとって大切な人になりつつあるような気がする。
ぼんやりとそう思った。


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少し風が出てきた。
肌寒く感じ、Miaは身を縮めた。

「寒っ」

ブルルっと身震いした。

「帰るか」

「ううん、もう少しここにいたい」
「もっと、色々話したいの」

「もう、突っ込んだ話は勘弁だ・・・」


彼はそう言いつつ、羽織っていたマントを脱ぐと、彼女の体を囲むように覆ってあげた。


「着てなさい。風邪引くぞ」

「わお、紳士的ね。こうやってあなたは女性を落とすの?」

「楽勝だな」
「落ちる女を見たことはないが」


Miaはあからさまにわかるようにおっさんに近付き、自分の体を押し付け寄りかかった。

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触れたところにぬくもりを感じた。
彼は避けなかった。


「落ちるわけないじゃない。」



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「でも、悪い気はしないわ」




ぬくぬくしながら、午後のひと時を過ごした。
彼と充実した時間を共有できたことへの、感謝と喜びに浸りながら。

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-つづく-

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