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ゆるゆるOblivion

Oblivion妄想RP日記です。渋親父率高いので、加齢臭漂ってます

毒婦

~死者への祈り~ 7:「毒婦」



マリア・エレーナは店仕舞いの準備をしていた。
店主は椅子をずらしながら掃き掃除をし、彼女はいつものようにグラスを洗っていた。
外扉には”Close”の看板を下げておいたのに、何故か扉が開く音がした。


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「もう、店仕舞いですよ。宿を取りたいなら受け付けるけど」

店主は入ってきた男性客に向かってそう告げた。
男性客はマリア・エレーナの姿を視とめると、軽く会釈した。
Azazelだった。

「あ、マスター、後のことは私がやっておくから」

マスターは察しがいいのか、余計な詮索はせずに大人しく引き上げてくれた。
マリア・エレーナはグラスを拭く手を止めずに、彼を招いた。

「今日はひとりなのね」

Azazelは身近な席におもむろに腰を降ろした。

「そう仕向けたのは君だろ?」

「あら、どういうことかしら?」

彼女はシラを切った。
何食わぬ顔をしながら、黙々と後片付けを続けている。


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「Miaに君と私の関係を喋っただろ。だから私はここにいる。そうだろ?」

「なら、来なければよかったじゃない」

「こうしなければ、君が次に何をするかわからないからな」
「話したいんだろ?」

「何か飲む?」

「いらん。」


マリア・エレーナは箒を壁に立掛けると、改めて彼の顔を見た。
彼はいつもと同じように眉間に皺を寄せながら、苦悶の色を浮かべている。
相変わらず渋い顔をしているわね・・・と、そっと心の中で彼女は思った。
マリア・エレーナは涼しげな目付きで彼を見やると、嬉しそうに微笑んだ。

「来てくれて嬉しいわ。二人きりになれるなんて、いつ以来かしら」
「私はただ、あなたと以前の関係に戻れないかとお願いしたかっただけなの」

「無理だと言ったはずだ。終わった話を蒸し返す気か?」

「私の中では終わってない。」


彼女はカウンターテーブルの中から出てくると、Azazelの傍へ近づいた。
そして、彼の背後に回ると首に両腕を絡め、そっと耳元で囁いた。

「あなたとの甘美な日々が忘れられないの」

Azazelの耳に彼女の吐息が触れると、彼は嫌そうに身を捻った。

「ふふ・・・」
「嫌がったって、わかるのよ・・・」


彼女は意味あり気な微笑を浮かべながら、カウンターに寄りかかった。


「欲しくて堪らないんでしょ?私とだったら、後腐れなく関係を持てるわよ。今までそうだったように。」


挑発するように屈んで彼の表情を伺った。
なんの反応も見せないのをいいことに、さらに刺激的な行動に出始める。

Azazelの膝の上に跨り、勝手に被っている帽子を取るとポイっと適当に投げ置いた。

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不機嫌そうにこちらを見ている彼の顎を両手で軽く押さえ、唇にキスをしようと迫る。
それを遮るように彼が彼女の両頬を右手で挟みこみ動きを掌握すると、左手で腰元を掴んだあとグイっと自分に引き寄せた。
逆に今度は彼の方から、マリア・エレーナの顎、首筋ギリギリに顔を寄せる。
絡みつくような視線を感じ、彼女は身を震わせた。
彼の吐息が自分の体を愛撫しているかのように吹きかかり、興奮さえ覚える。

呼吸を荒くしながら、なすがままにされている状況に彼女は悦びを隠せなかった。

Azazelはマリア・エレーナの唇すれすれに自分の唇を寄せた。
彼女はようやく自分の願いが叶うと信じ、瞳を閉じる。
そして彼は、かすれた声で静かに囁く。


「駄目だ」


そう言うと、彼は何事もなかったように身を引き離した。
バランスを崩しよろめくマリア・エレーナ。
その顔には驚きが浮かんでいた。

「君の期待には応えられない。年寄りにあまり無理難題をふっかけないでくれ」


彼女はため息をつきながら、疲れたようにカウンターにもたれた。
今の思わせぶりな彼の態度にすっかり騙されてしまった自分が情けない。
駆け引きは自分の得意分野なのに、彼に主導権を握られてしまったような気がする。
こういう分野に置ける弱者は、得てして思い焦がれている側なのだから仕方ないのだが。

「あなたって、本当に我侭で自分勝手な人ね」

「とっくに知ってるものと思っていたが。」

「ええ、嫌っていうほどね」

捨て台詞のように言葉を吐きだした。


彼はいつもそうだった。
基本的には優しいのだが、自分の信念を曲げることのできない人間だった。
それは時に、相手を傷つけ、遠くへ追いやろうとする。
そうして彼は彼女から離れていったのだ。


「・・・君が私に固執する理由がわからない。君にはごまんと彼氏がいるだろう。彼等だけじゃ不十分なのか?」


マリア・エレーナには数え切れない程の男友達がいた。
自由気ままな間柄を常に望んでいるので、不特定多数の男性と関係をもつことに抵抗はない。
基本的にHが好きなのである。
尻軽女と言われても、彼女は否定しないだろう。
ただ、彼女とそこまでの仲になるには、かなり難しい試練を乗り切らなければならないようだが。

「彼等は関係ないわ。ただ、あなたが特別なだけ。」

「振られた経験がないわけではないだろう」

「そりゃそうよ。私を一体いくつだと思ってるの?」


彼女は見かけは若いが、エルフ族は長命なことで有名だ。
おそらく、この世に生を受けてから100年以上は経っていることだろう。

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「でも、もういいわ。大人しく引き下がってあげる」
「十分あなたを困らせたみたいだし」


目を細めて、ふふっと微かに笑った。
Azazelの中の不安は、どうやっても拭いきれるものではないなと、彼女の態度を見て感じた。
きっとまた、隙あらば言い寄ってくるつもりだ。
彼女の気持ちが成就するかどうかは関係ない。
彼女はこの一連のやり取りをかなり楽しんでいる。
毒婦の片鱗を見せ付けられたような気がして、Azazelは気が滅入った。

「今度仕掛けるときは、関係ない者を巻き込むんじゃないぞ」
「特にMiaは」

マリア・エレーナの表情が曇った。
申し訳なさそうに俯く。

「・・・利用するつもりはなかったのよ・・・」

マリア・エレーナは自分の罪を恥じているようだった。
Miaに彼との関係を漏らせば、彼女はマリア・エレーナのことを思い、なにかしらのアクションを起こすはずだと彼女は予見していた。
案の定、彼女の思い描いたとおりになった。
計画はAzazelには筒抜けだったようだが、実際彼は出向いてくれたのだから。


「Miaには何も言わないでくれる?」

「当たり前だ。君は、唯一マトモな女友達なんだからな。彼女は君の事をとても大切に思っているんだぞ」

「・・・わかってるわ・・・」
「私も彼女を大切に思ってるわ。素直で、とても可愛い、素敵な子。」

「これからも仲良くしてやってくれ」


彼は立ち上がった。
そろそろ話を終わらせて帰宅する頃合だ。
時間はもう深夜に差し迫っていた。

「ねえ、また来てくれる?」

「同郷の仲間として付き合っていく気があるのなら、また来よう」
「私をたぶらかすのは、なしだ。」

「私の楽しみを奪うつもり?仕様の無い人・・・」


あきれたように息をつくと、両手を腰にあて首を傾げた。


「待ってるわ」


彼女は穏やかに彼に微笑みかけた。

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Azazelは安心したように頷くと、扉に足を向けた。
歩き去っていく彼の背中に彼女の声が届く。


「Miaに宜しくね」



彼は振り返らずに右手を軽く上げると、酒場を後にした。



-つづく-

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映画でよくある大人な関係を目指してるんですが・・・うまく書けないのが悩み所でございますorz
色っぽい女性キャラを作成出来てない時点で終わってるような気もしますが・・・。

ちなみに酒場の店主は雇われマスターで、経営者はマリア・エレーナです。
それと、彼女のイメージは日本人でいうと杉本彩だったりします(笑)


最後にこの曲を聴きながら読んでいただけると雰囲気倍増で宜しいかと思います。

Una musica brutal - Gotan Project


色っぽい~

バンデラス格好良い~



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