ゆるゆるOblivion
Oblivion妄想RP日記です。渋親父率高いので、加齢臭漂ってます
本の虫
-本の虫-
おっさんはソファに座ってのんびりくつろぎながら読書に耽っていた。

就寝時間までの空いた時間には本を読むことが彼の日課となっている。
そして、これが唯一の趣味でもあり、リラックスタイムでもあった。
お気に入りのワインを飲みながら、ページをめくり、その世界観に浸る。
なんとも優雅で、幸せに満ちたひと時だろう。
彼はこの時間が大好きだった。
にも拘らず、それをぶち壊すように先程から不満の声を上げ騒いでいる奴がいる。
Miaだ。
彼女は彼の横に座ったり、寝転んだり、部屋中をウロウロしながら暇を持て余していた。
習慣でつけている日記はすでに書き終わり、読みかけだった本も最後まで読んでしまった。
お酒を飲みたい気分でもないし、寝るにも時間が早すぎる。
とにかく何もすることがなく手持ち無沙汰なのだ。

「・・・なぁ~んか、つーまんないな~・・・」
駄々る子供のように口を開けば”つまんない”、”暇だ”を繰り返している。
おっさんは本を読むことの方が優先事項なので、彼女のことはずっと放ったらかしにしていた。
「本でも読め」
文字から目を離さずに適当にあしらう。
「だって、もう読み終わっちゃったんだもん」
「まだ本棚には腐るほどあるぞ」
Azazelは読書家なので本棚には沢山の本が並べられていた。
彼女は彼の言葉に渋々と従うと、前方を立ち塞ぐかのように聳え立つ本棚を見上げた。
ここまで本が詰め込まれているとかなりの威圧感だ。

それにしても、どれがどういうジャンルの物で、どう面白いのかが全くわからない。
彼女は首を捻りながらもとりあえず適当に取り出し、パラパラとめくってみた。
数冊に渡って同じ事を繰り返すと、「あっ」と驚きの声をあげた。
「”好色アルゴニアンメイド(The Lusty Argonian Maid)”じゃん!おっさん、こんな本読んでたの!?」
超有名な大人向け小説(18禁)だ。
まさかこの家にこの本があるとは思わなかった。
意外な発見にMiaのテンションも上がる。
「一家に一冊あるもんだろ」
「え、そうなの?”家庭の医学”みたいな感じ?」
「そうだ」
「普通こういうのって、ベッドの下とかに隠しておくもんじゃないの?」
「見つかってヤバイものなのか?別にかまわんだろ。」
彼はあまり気にしないようだ。
まあ、いい年こいたおっさんがこっそりベッドの下に隠している方が気味が悪いかもしれない。
逆に普通に本棚に並べられてる方が当たり前のような気がした。
いや、それはそれでおかしいのかもしれないけど。
Miaは物珍しそうにその本を持ってソファに腰掛けると早速読み始めた。
しかし、あっという間に読み終わってしまったのか、テーブルの上に無造作に本を置くと、欠伸をしながら背伸びをしていた。

「あー・・・、暇だな~・・・」
チラっとおっさんの横顔を垣間見る。
彼は本に夢中のようで、全くこちらを気にもしてくれない。
というか、どうでもいいらしい。
それが彼女の脳髄にとてつもなくカチンコチンきた。
「ねー、暇なんだけどー。暇を持て余してるんですけどー」
おっさんの反応があるまで自己アピールを繰り返すMia。
とにかく自分に注意を向けて欲しいのだ。
彼は一向にこちらを向いてもくれないが、ボソっと言葉を発してくれた。
「Eyjaとお茶でも飲んできたらどうだ」
「別にEyjaさんとお話がしたいわけじゃないもの」
「じゃあ、もう寝なさい。」
「まだ眠くない」
「あ、そうだ、おっさんカードやろうよ、カード」
彼は何も言わない。
「ねえ、一緒にカードしてよー」
ギロっと凄みのきいた表情でおっさんが振り向いた。
かなり不機嫌そうにしながら自分の持っている本をMiaに見せつけ、表紙をトントンと指で軽く叩く。
「あー・・・そうね、読書中だもんね。邪魔してごめんなさい」
彼からの無言の圧迫に負けたのか、Miaはすごすごと引き下がった。
だからといって特にやることもない。
仕方ないので部屋の片隅で育てさせてもらっている植物の様子を見に行ってみる。

日当たりの良い場所のおかげか、すくすくと成長しているようだ。
水はもうあげてしまったので、成長の妨げになりそうな葉を数枚取り除き、虫がついてないかどうか調べる。
うん、大丈夫そうだ。
一仕事終えたことに満足はしたが、時間はたいして経ってなかった。
読書中の彼の横で疲れたようにソファに横になると、天井を見上げた。

シャンデリアの小さいいくつもの灯りがゆらゆらと揺らめいている。
暫くその光を見つめていたがどうにもやっぱりつまらない。
つまらないという思いだけが刻々と募っていく。
彼女はムキーっとなる自分を抑えるためにバタバタと両足を動かした。
ソファのクッションから埃が舞い上がる。
そんなことをしてもおっさんは気にもしてくれない。
Miaはため息をついた。
今日ほど時間の流れが遅いことを恨めしく思ったことはなかったろう。
彼女はソファにちょこんと座りなおすと、本を読んでいる彼を寂しそうに見つめた。
見つめ続けたからといって彼の本が読み終わるわけでもない。
Miaはこの暇さ加減に耐え切れなくなり、再び彼にちょっかいを出し始めた。
「・・・ねえ、なんか面白いことなーい?」
彼女はおっさんにずいっと近付くと、彼が夢中になっている本を後から覗き込んだ。
「何読んでるの?それ面白い?」
彼は表紙を見せてくれた。
そこには”「The Wolf Queen」狼の女王”と書かれていた。
「面白いぞ。君も読むか?全巻揃ってるぞ」
「暫く本はいいや。」
「ねえ、後どれくらいで読み終わるの?」
「まあ・・・、一時間くらいかな」
「えー、そんなにー??」
何かやることがあればうっとうしい程におっさんにちょっかいを出すこともないだろう。
Miaは何もしないでいる時間というものに全く免疫がなかった。
とにかく何かしてないと落ち着かず、時間がもったいなくて仕方ないのだ。
しかしそれ以上に、彼のあまりにもそっけない態度が逆にMiaの”構ってちゃんモード”に火を点けてしまったらしい。
「読み終わったら一緒にカードしてくれる?」
「カードでも何でもしてやる」
しつこいMiaがさすがにうっとうしく思えてきたのか、ぶっきらぼうに言い放った。
「じゃあ、待ってる」
彼女は口を閉じ大人しくなった。
と、思いきや、いきなりドンっと彼の太股の上に両足を乗せた。
そのまま伸びをしながら大欠伸をかいている。
「・・・・」
おっさんは自分の太股の上に乗っている白い足を黙って見つめていた。
重い。
邪魔だ。
だが、彼は何事も無かったかのように無視を決め込んだ。
バタバタバタ
彼の太股の上で陸に上げられた魚のように白い足が動く。
おっさんのこめかみに血管が浮き上がる。
ふいにおっさんがその白い足を押さえ込むかのように上から本を押し付けた。
ため息をつきながらMiaを見つめている。
その表情には呆れと疲れが浮かんでいた。
「・・・一体なんなんだ?何故、邪魔をする?本くらいゆっくり読ませてくれ」
さっきからずっとMiaにちょっかい出されまくりで、全く本に集中できない。
彼はただ静かに読書をしたいだけなのに、彼女がそうさせてくれない。
「だって、暇なんだもん」
「散歩にでも行け」
「こんな夜中に女の子1人で散歩に行かすの?」
「君なら何があっても大丈夫だろ」
「それはどうかしら。もしかしたら、かどわかされちゃうかもよ?」
「試しに大人しくかどわかされてみてはどうだ」
Miaはぶぅっと頬を膨らませながら、ムっとおっさんを睨みつけた。
その後ため息をつきながらがっくりと肩を落とす。
「・・・なんかあれよね、強い女っていうのは色々と損よね・・・」
一般的なか弱い女性が相手なら、おそらくこんなことは言われないだろう。
彼女は確かに誰よりも強く、彼女に敵うほどの腕前を持つ男性もいない。
それでも一応女性なのだから心配のひとつもされてみたいと思っていた。
例えば、”夜の一人歩きは危険だから、行くなら一緒に行こう”とか、そういう普通の対応だ。
おっさんは口ではあんなことを言ってはいるが、心配性の彼のことだ、内心では逆のことを思っているかもしれない。
けど、思っているだけではなく、口に出して欲しい。
嘘でもいいから言って欲しいのだ。
「・・・一緒に行って欲しいなら、そう言えばいい」
おっさんは彼女の気持ちを知ってか知らずか、多少優しい口調で彼女をなだめた。
「別に散歩になんか行きたくないもん」
「ねえ、お願いだから構ってよ。本なんかいつでも読めるじゃない」
「私から大切な時間を奪う気か?暇なのは君の勝手だろ、私には関係ない。」
「本のどこが好きなの?私と遊ぶよりも面白いの?」
「当たり前だ」
なんの躊躇もなく彼はそう言い切った。
彼から読書時間を取り上げることはかなり難しそうだ。
「・・・ふ~ん・・・・」
Miaは妙に納得した風を装いながら、何かを考え始めた。
そして再び読書に戻る彼の横から本を覗き込むと、ある考えが閃いた。
「ねえ、そんなに面白いなら私に読んで聞かせてよ」
「・・・君は子供か?」
おっさんが困ったように顔を歪めた。
それとは正反対にMiaの瞳は期待に満ち溢れんばかりに輝いている。
まるで童心に戻ったかのようにワクワクしていた。
「いいじゃない。一緒に読みたいのよ」
期待に胸を膨らませているのが伝わったのか、彼が反論する気配はなかった。
「・・・仕様が無いな・・・・」
「少しだけだぞ。」
彼は渋々と今自分が目を通していた部分を声に出して読み始めた。

「・・・不意に、Antiochusは声を立てて笑い出す。
そして、スパイマスターの方にウインクを送ってみせる。
”そう言えば、Khajiitのポルノを暴いて俺をゆすったのはお前だったな。
もう二十年近くも前になるのか。
俺も今では良い鍵を手に入れた、それは分かっただろう?
お前の欲しいものを手に入れるのに自分のスキルじゃ追い付かなくって、さぞかし参ったに違いないね”
Potemaは単に笑ってみせるだけだ。そんなことは重要ではないのだ。
彼女はAntiochusを手中に収めてしまったのだから。・・・」
Azazelは淡々と読み進めていく。
彼女は彼の肩にもたれかかりながら彼の発する言葉に耳を傾けていた。
朗読する彼の声は普段と違い、刺々しさの無い心地良い声だった。
ガラついた渋い声質だが滑舌がいいせいか、とても聞き取りやすかった。
チラっと黙々と読み聞かせてくれている彼の顔を見上げた。
おっさんは眼鏡をかけている。
そういえば本を読む時はいつもどこからか眼鏡を出しては掛けていたことを思い出した。
今までもずっとそうだった筈なのに、気に留めたことはなかった。
下から見ると結構度がきついのか、レンズに写る景色が歪んで見えた。
「・・・老眼鏡?」
彼は本を読むのを止め、Miaの問いに答えた。
「そうだ」
「いつからかけてるの?」
「4~5年くらい前かな」
「普段はかけてないのにね」
「老眼鏡だからな。」
彼女は身を離して眼鏡姿の彼をあらためて眺めていた。
訝しげにおっさんがこちらを一瞥した。
「なんだ」
「え?いや、結構似合うなーって思ってさ」
「少しずり落ちてる感じがいいよね。」
Miaはえへへと照れ臭そうに笑っている。
厳つい顔にずり落ちた眼鏡姿がとても愛らしく思えたのだ。
「可愛い」うふふ
おっさんはどう反応していいのかわからず、ちょっと困った顔をしていた。
「・・・もう読まなくていいのか?」
「あ、いや、だめ。もっと読んで欲しいよ」
「・・・あなたの声を聞いてると、凄く落ち着くの・・・」
「まるで子守唄だな」
「近いものがあるわね」
彼女はふふっと笑った。
なんとなくだが、こういった情景が懐かしく思えた。
子供の頃に同じように父親に本を読んでもらった事があるのかもしれない。
記憶には無いが、居心地の良いまったりとしたこの空気がなによりの証拠かもしれなかった。
Azazelは再び朗読を始めた。
「・・・”狼女王、皇帝になるのは、この俺だ。さあ、出て行け”
彼女は兄の手に手紙を渡して部屋を去った。それから少しの間、何も言えないままに廊下に突っ立っていた。
そして、大理石製の壁の見えない程に小さな割れ目から雨の断片が染み出してくるのを、
それを彼女は見詰めているだけであった。・・・・」
10分くらい読み続けただろうか。
自分の左肩に寄りかかっている彼女が著しく重くなった。
どうやら眠ってしまったようだ。

おっさんは読むのを止めた。
「・・・やめないで、ちゃんと聞いてるから」
「眠いなら自分のベッドで寝ろ」
「まだ眠くないよ」
「ちょっと気持ちが良いだけ・・・」
うとうとしながら夢見心地の中で彼の朗読を聞くことが幸せでたまらない。
いつの間に自分は彼にここまで気を許してしまったのだろうと不思議に思ったが、このまったり感には抗えなかった。
「お願い、もうちょっと続けて」
「声を出し続ける事は結構疲れるんだがな・・・」
「・・・・お願い・・・・」
おっさんは深く息をつくと、渋々朗読を再開した。
読み続けていく内に段々と声が小さくなり、囁くような語りとなる。
さすがに喉も疲れてきたようだ。
そろそろ勘弁して貰おうと思い、チラリとMiaの様子を伺い見る。
ゆっくりとだが彼女の頭が垂れ下がり、左肩から腕を伝うように落ち、沈み込むように彼の太股の上で横になった。
彼女は寝息を立てていた。
今度こそ本当に寝たようだ。
おっさんは”ふう”と息をつくと本を閉じた。
「・・・・寝てないわよ」
ドキっとするおっさん。
「・・・もっと聞かせて・・・・」
「・・・・・・・・」
スー・・・スー・・・・
寝息だけになった。
今度こそ、今度こそ本当に寝たようだ。
おっさんは彼女を起こさないようにゆっくりと大きく息をついた。
やっと解放されたのだ。
声を出し続けたせいで渇ききってしまった喉を潤すために軽くワインを口に含んだ。
子供に絵本を読み聞かせたような充実感が久し振りに蘇ってきていた。
とても懐かしい感覚だ。
だがこんなに大きな子供に本を読み聞かせたのは初めてだ。
気持ち良さそうに自分の太股の上で眠っている彼女は無防備そのもので、とても可愛らしく思えた。
戦いにかけては誰にも引けをとらず、Sir.Knightとまで呼ばれている戦士の面影はない。
無性に、柔らかそうな頬をつねってやりたい衝動に駆られる。
しかし、そんなことをしたらまた朗読させられそうなので、そっとしておくことにした。
暫く同じ姿勢でいたせいか、かなり腰が痛い。
身を捻って伸びをしたいが彼女を起こしたくないので我慢するしかなさそうだ。
おっさんは軽く首だけ回すと、再び本を開いた。
グッスリと眠りこけている彼女の体をまるで肘掛にでもするように腕を乗せると、自分だけの時間に戻ることにした。

-おわり-
*注意*
「The Wolf Queen 」の本文は”Oblivion 日本語化 Wiki 避難所”にあるものから抜粋致しました。
おっさんはソファに座ってのんびりくつろぎながら読書に耽っていた。

就寝時間までの空いた時間には本を読むことが彼の日課となっている。
そして、これが唯一の趣味でもあり、リラックスタイムでもあった。
お気に入りのワインを飲みながら、ページをめくり、その世界観に浸る。
なんとも優雅で、幸せに満ちたひと時だろう。
彼はこの時間が大好きだった。
にも拘らず、それをぶち壊すように先程から不満の声を上げ騒いでいる奴がいる。
Miaだ。
彼女は彼の横に座ったり、寝転んだり、部屋中をウロウロしながら暇を持て余していた。
習慣でつけている日記はすでに書き終わり、読みかけだった本も最後まで読んでしまった。
お酒を飲みたい気分でもないし、寝るにも時間が早すぎる。
とにかく何もすることがなく手持ち無沙汰なのだ。

「・・・なぁ~んか、つーまんないな~・・・」
駄々る子供のように口を開けば”つまんない”、”暇だ”を繰り返している。
おっさんは本を読むことの方が優先事項なので、彼女のことはずっと放ったらかしにしていた。
「本でも読め」
文字から目を離さずに適当にあしらう。
「だって、もう読み終わっちゃったんだもん」
「まだ本棚には腐るほどあるぞ」
Azazelは読書家なので本棚には沢山の本が並べられていた。
彼女は彼の言葉に渋々と従うと、前方を立ち塞ぐかのように聳え立つ本棚を見上げた。
ここまで本が詰め込まれているとかなりの威圧感だ。

それにしても、どれがどういうジャンルの物で、どう面白いのかが全くわからない。
彼女は首を捻りながらもとりあえず適当に取り出し、パラパラとめくってみた。
数冊に渡って同じ事を繰り返すと、「あっ」と驚きの声をあげた。
「”好色アルゴニアンメイド(The Lusty Argonian Maid)”じゃん!おっさん、こんな本読んでたの!?」
超有名な大人向け小説(18禁)だ。
まさかこの家にこの本があるとは思わなかった。
意外な発見にMiaのテンションも上がる。
「一家に一冊あるもんだろ」
「え、そうなの?”家庭の医学”みたいな感じ?」
「そうだ」
「普通こういうのって、ベッドの下とかに隠しておくもんじゃないの?」
「見つかってヤバイものなのか?別にかまわんだろ。」
彼はあまり気にしないようだ。
まあ、いい年こいたおっさんがこっそりベッドの下に隠している方が気味が悪いかもしれない。
逆に普通に本棚に並べられてる方が当たり前のような気がした。
いや、それはそれでおかしいのかもしれないけど。
Miaは物珍しそうにその本を持ってソファに腰掛けると早速読み始めた。
しかし、あっという間に読み終わってしまったのか、テーブルの上に無造作に本を置くと、欠伸をしながら背伸びをしていた。

「あー・・・、暇だな~・・・」
チラっとおっさんの横顔を垣間見る。
彼は本に夢中のようで、全くこちらを気にもしてくれない。
というか、どうでもいいらしい。
それが彼女の脳髄にとてつもなくカチンコチンきた。
「ねー、暇なんだけどー。暇を持て余してるんですけどー」
おっさんの反応があるまで自己アピールを繰り返すMia。
とにかく自分に注意を向けて欲しいのだ。
彼は一向にこちらを向いてもくれないが、ボソっと言葉を発してくれた。
「Eyjaとお茶でも飲んできたらどうだ」
「別にEyjaさんとお話がしたいわけじゃないもの」
「じゃあ、もう寝なさい。」
「まだ眠くない」
「あ、そうだ、おっさんカードやろうよ、カード」
彼は何も言わない。
「ねえ、一緒にカードしてよー」
ギロっと凄みのきいた表情でおっさんが振り向いた。
かなり不機嫌そうにしながら自分の持っている本をMiaに見せつけ、表紙をトントンと指で軽く叩く。
「あー・・・そうね、読書中だもんね。邪魔してごめんなさい」
彼からの無言の圧迫に負けたのか、Miaはすごすごと引き下がった。
だからといって特にやることもない。
仕方ないので部屋の片隅で育てさせてもらっている植物の様子を見に行ってみる。

日当たりの良い場所のおかげか、すくすくと成長しているようだ。
水はもうあげてしまったので、成長の妨げになりそうな葉を数枚取り除き、虫がついてないかどうか調べる。
うん、大丈夫そうだ。
一仕事終えたことに満足はしたが、時間はたいして経ってなかった。
読書中の彼の横で疲れたようにソファに横になると、天井を見上げた。

シャンデリアの小さいいくつもの灯りがゆらゆらと揺らめいている。
暫くその光を見つめていたがどうにもやっぱりつまらない。
つまらないという思いだけが刻々と募っていく。
彼女はムキーっとなる自分を抑えるためにバタバタと両足を動かした。
ソファのクッションから埃が舞い上がる。
そんなことをしてもおっさんは気にもしてくれない。
Miaはため息をついた。
今日ほど時間の流れが遅いことを恨めしく思ったことはなかったろう。
彼女はソファにちょこんと座りなおすと、本を読んでいる彼を寂しそうに見つめた。
見つめ続けたからといって彼の本が読み終わるわけでもない。
Miaはこの暇さ加減に耐え切れなくなり、再び彼にちょっかいを出し始めた。
「・・・ねえ、なんか面白いことなーい?」
彼女はおっさんにずいっと近付くと、彼が夢中になっている本を後から覗き込んだ。
「何読んでるの?それ面白い?」
彼は表紙を見せてくれた。
そこには”「The Wolf Queen」狼の女王”と書かれていた。
「面白いぞ。君も読むか?全巻揃ってるぞ」
「暫く本はいいや。」
「ねえ、後どれくらいで読み終わるの?」
「まあ・・・、一時間くらいかな」
「えー、そんなにー??」
何かやることがあればうっとうしい程におっさんにちょっかいを出すこともないだろう。
Miaは何もしないでいる時間というものに全く免疫がなかった。
とにかく何かしてないと落ち着かず、時間がもったいなくて仕方ないのだ。
しかしそれ以上に、彼のあまりにもそっけない態度が逆にMiaの”構ってちゃんモード”に火を点けてしまったらしい。
「読み終わったら一緒にカードしてくれる?」
「カードでも何でもしてやる」
しつこいMiaがさすがにうっとうしく思えてきたのか、ぶっきらぼうに言い放った。
「じゃあ、待ってる」
彼女は口を閉じ大人しくなった。
と、思いきや、いきなりドンっと彼の太股の上に両足を乗せた。
そのまま伸びをしながら大欠伸をかいている。
「・・・・」
おっさんは自分の太股の上に乗っている白い足を黙って見つめていた。
重い。
邪魔だ。
だが、彼は何事も無かったかのように無視を決め込んだ。
バタバタバタ
彼の太股の上で陸に上げられた魚のように白い足が動く。
おっさんのこめかみに血管が浮き上がる。
ふいにおっさんがその白い足を押さえ込むかのように上から本を押し付けた。
ため息をつきながらMiaを見つめている。
その表情には呆れと疲れが浮かんでいた。
「・・・一体なんなんだ?何故、邪魔をする?本くらいゆっくり読ませてくれ」
さっきからずっとMiaにちょっかい出されまくりで、全く本に集中できない。
彼はただ静かに読書をしたいだけなのに、彼女がそうさせてくれない。
「だって、暇なんだもん」
「散歩にでも行け」
「こんな夜中に女の子1人で散歩に行かすの?」
「君なら何があっても大丈夫だろ」
「それはどうかしら。もしかしたら、かどわかされちゃうかもよ?」
「試しに大人しくかどわかされてみてはどうだ」
Miaはぶぅっと頬を膨らませながら、ムっとおっさんを睨みつけた。
その後ため息をつきながらがっくりと肩を落とす。
「・・・なんかあれよね、強い女っていうのは色々と損よね・・・」
一般的なか弱い女性が相手なら、おそらくこんなことは言われないだろう。
彼女は確かに誰よりも強く、彼女に敵うほどの腕前を持つ男性もいない。
それでも一応女性なのだから心配のひとつもされてみたいと思っていた。
例えば、”夜の一人歩きは危険だから、行くなら一緒に行こう”とか、そういう普通の対応だ。
おっさんは口ではあんなことを言ってはいるが、心配性の彼のことだ、内心では逆のことを思っているかもしれない。
けど、思っているだけではなく、口に出して欲しい。
嘘でもいいから言って欲しいのだ。
「・・・一緒に行って欲しいなら、そう言えばいい」
おっさんは彼女の気持ちを知ってか知らずか、多少優しい口調で彼女をなだめた。
「別に散歩になんか行きたくないもん」
「ねえ、お願いだから構ってよ。本なんかいつでも読めるじゃない」
「私から大切な時間を奪う気か?暇なのは君の勝手だろ、私には関係ない。」
「本のどこが好きなの?私と遊ぶよりも面白いの?」
「当たり前だ」
なんの躊躇もなく彼はそう言い切った。
彼から読書時間を取り上げることはかなり難しそうだ。
「・・・ふ~ん・・・・」
Miaは妙に納得した風を装いながら、何かを考え始めた。
そして再び読書に戻る彼の横から本を覗き込むと、ある考えが閃いた。
「ねえ、そんなに面白いなら私に読んで聞かせてよ」
「・・・君は子供か?」
おっさんが困ったように顔を歪めた。
それとは正反対にMiaの瞳は期待に満ち溢れんばかりに輝いている。
まるで童心に戻ったかのようにワクワクしていた。
「いいじゃない。一緒に読みたいのよ」
期待に胸を膨らませているのが伝わったのか、彼が反論する気配はなかった。
「・・・仕様が無いな・・・・」
「少しだけだぞ。」
彼は渋々と今自分が目を通していた部分を声に出して読み始めた。

「・・・不意に、Antiochusは声を立てて笑い出す。
そして、スパイマスターの方にウインクを送ってみせる。
”そう言えば、Khajiitのポルノを暴いて俺をゆすったのはお前だったな。
もう二十年近くも前になるのか。
俺も今では良い鍵を手に入れた、それは分かっただろう?
お前の欲しいものを手に入れるのに自分のスキルじゃ追い付かなくって、さぞかし参ったに違いないね”
Potemaは単に笑ってみせるだけだ。そんなことは重要ではないのだ。
彼女はAntiochusを手中に収めてしまったのだから。・・・」
Azazelは淡々と読み進めていく。
彼女は彼の肩にもたれかかりながら彼の発する言葉に耳を傾けていた。
朗読する彼の声は普段と違い、刺々しさの無い心地良い声だった。
ガラついた渋い声質だが滑舌がいいせいか、とても聞き取りやすかった。
チラっと黙々と読み聞かせてくれている彼の顔を見上げた。
おっさんは眼鏡をかけている。
そういえば本を読む時はいつもどこからか眼鏡を出しては掛けていたことを思い出した。
今までもずっとそうだった筈なのに、気に留めたことはなかった。
下から見ると結構度がきついのか、レンズに写る景色が歪んで見えた。
「・・・老眼鏡?」
彼は本を読むのを止め、Miaの問いに答えた。
「そうだ」
「いつからかけてるの?」
「4~5年くらい前かな」
「普段はかけてないのにね」
「老眼鏡だからな。」
彼女は身を離して眼鏡姿の彼をあらためて眺めていた。
訝しげにおっさんがこちらを一瞥した。
「なんだ」
「え?いや、結構似合うなーって思ってさ」
「少しずり落ちてる感じがいいよね。」
Miaはえへへと照れ臭そうに笑っている。
厳つい顔にずり落ちた眼鏡姿がとても愛らしく思えたのだ。
「可愛い」うふふ
おっさんはどう反応していいのかわからず、ちょっと困った顔をしていた。
「・・・もう読まなくていいのか?」
「あ、いや、だめ。もっと読んで欲しいよ」
「・・・あなたの声を聞いてると、凄く落ち着くの・・・」
「まるで子守唄だな」
「近いものがあるわね」
彼女はふふっと笑った。
なんとなくだが、こういった情景が懐かしく思えた。
子供の頃に同じように父親に本を読んでもらった事があるのかもしれない。
記憶には無いが、居心地の良いまったりとしたこの空気がなによりの証拠かもしれなかった。
Azazelは再び朗読を始めた。
「・・・”狼女王、皇帝になるのは、この俺だ。さあ、出て行け”
彼女は兄の手に手紙を渡して部屋を去った。それから少しの間、何も言えないままに廊下に突っ立っていた。
そして、大理石製の壁の見えない程に小さな割れ目から雨の断片が染み出してくるのを、
それを彼女は見詰めているだけであった。・・・・」
10分くらい読み続けただろうか。
自分の左肩に寄りかかっている彼女が著しく重くなった。
どうやら眠ってしまったようだ。

おっさんは読むのを止めた。
「・・・やめないで、ちゃんと聞いてるから」
「眠いなら自分のベッドで寝ろ」
「まだ眠くないよ」
「ちょっと気持ちが良いだけ・・・」
うとうとしながら夢見心地の中で彼の朗読を聞くことが幸せでたまらない。
いつの間に自分は彼にここまで気を許してしまったのだろうと不思議に思ったが、このまったり感には抗えなかった。
「お願い、もうちょっと続けて」
「声を出し続ける事は結構疲れるんだがな・・・」
「・・・・お願い・・・・」
おっさんは深く息をつくと、渋々朗読を再開した。
読み続けていく内に段々と声が小さくなり、囁くような語りとなる。
さすがに喉も疲れてきたようだ。
そろそろ勘弁して貰おうと思い、チラリとMiaの様子を伺い見る。
ゆっくりとだが彼女の頭が垂れ下がり、左肩から腕を伝うように落ち、沈み込むように彼の太股の上で横になった。
彼女は寝息を立てていた。
今度こそ本当に寝たようだ。
おっさんは”ふう”と息をつくと本を閉じた。
「・・・・寝てないわよ」
ドキっとするおっさん。
「・・・もっと聞かせて・・・・」
「・・・・・・・・」
スー・・・スー・・・・
寝息だけになった。
今度こそ、今度こそ本当に寝たようだ。
おっさんは彼女を起こさないようにゆっくりと大きく息をついた。
やっと解放されたのだ。
声を出し続けたせいで渇ききってしまった喉を潤すために軽くワインを口に含んだ。
子供に絵本を読み聞かせたような充実感が久し振りに蘇ってきていた。
とても懐かしい感覚だ。
だがこんなに大きな子供に本を読み聞かせたのは初めてだ。
気持ち良さそうに自分の太股の上で眠っている彼女は無防備そのもので、とても可愛らしく思えた。
戦いにかけては誰にも引けをとらず、Sir.Knightとまで呼ばれている戦士の面影はない。
無性に、柔らかそうな頬をつねってやりたい衝動に駆られる。
しかし、そんなことをしたらまた朗読させられそうなので、そっとしておくことにした。
暫く同じ姿勢でいたせいか、かなり腰が痛い。
身を捻って伸びをしたいが彼女を起こしたくないので我慢するしかなさそうだ。
おっさんは軽く首だけ回すと、再び本を開いた。
グッスリと眠りこけている彼女の体をまるで肘掛にでもするように腕を乗せると、自分だけの時間に戻ることにした。

-おわり-
*注意*
「The Wolf Queen 」の本文は”Oblivion 日本語化 Wiki 避難所”にあるものから抜粋致しました。
------------------------------------
秋という人恋しい季節ですので、ちょっぴり小っ恥ずかしい話にしてみました。
一話完結なら多少恥ずかしい話でも大丈夫なのではないかと・・・^^;
最初は18禁でした(汗)
それじゃあ、さすがにマズイだろうと思い、あたり障りのない内容に書き直しました。
だって、いつまでたってもラブラブできないんだもん><
今の時点ではこれくらいの触れ合いが限界です。
これ以上いったら、そりゃぁ2人とも大人ですから・・・ねぇ?(笑)
いえいえ、まだまだ先のお話でございます(何がだ)。
それにしてもペアポーズというのは皆さんどう作成なさってるんでしょうね?
知識がほぼ皆無の私はゲームに反映させて写真を撮影して、それを見ながらBlenderで対のポーズを作るというとっても面倒臭いことをしております。
Blender難しいです・・・orz
::::::::::::::::
ちなみに、おっさんがどんな感じで朗読しているか雰囲気だけでも味わいたい方はこちらをお聞き下さいませ。
「ASIENCE SPRIT OF ASIA」(J-WAVE)(リンク切れ><)
田中美里さんのラジオに山路和弘さんがゲスト出演された回です。
3~4分くらいのショートドラマで、心に染み入る素敵な物語が聞けます。
あぁ、いい声だ・・・(極度の渋声マニアです)
(追記:2013.4.20)
上記のものがリンクが切れてしまったので、新たに違うものを貼っておきます。
< ヤンデレの妹に死ぬほど愛されても非情な2代目ゴッドファーザー >
え~、こんな感じです(笑)
秋という人恋しい季節ですので、ちょっぴり小っ恥ずかしい話にしてみました。
一話完結なら多少恥ずかしい話でも大丈夫なのではないかと・・・^^;
最初は18禁でした(汗)
それじゃあ、さすがにマズイだろうと思い、あたり障りのない内容に書き直しました。
だって、いつまでたってもラブラブできないんだもん><
今の時点ではこれくらいの触れ合いが限界です。
これ以上いったら、そりゃぁ2人とも大人ですから・・・ねぇ?(笑)
いえいえ、まだまだ先のお話でございます(何がだ)。
それにしてもペアポーズというのは皆さんどう作成なさってるんでしょうね?
知識がほぼ皆無の私はゲームに反映させて写真を撮影して、それを見ながらBlenderで対のポーズを作るというとっても面倒臭いことをしております。
Blender難しいです・・・orz
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ちなみに、おっさんがどんな感じで朗読しているか雰囲気だけでも味わいたい方はこちらをお聞き下さいませ。
「ASIENCE SPRIT OF ASIA」(J-WAVE)(リンク切れ><)
田中美里さんのラジオに山路和弘さんがゲスト出演された回です。
3~4分くらいのショートドラマで、心に染み入る素敵な物語が聞けます。
あぁ、いい声だ・・・(極度の渋声マニアです)
(追記:2013.4.20)
上記のものがリンクが切れてしまったので、新たに違うものを貼っておきます。
< ヤンデレの妹に死ぬほど愛されても非情な2代目ゴッドファーザー >
え~、こんな感じです(笑)