ゆるゆるOblivion
Oblivion妄想RP日記です。渋親父率高いので、加齢臭漂ってます
英雄の条件~第1話
○英雄(ヒーロー)の条件○
第1話
黒しか見えない。
空間というものがまるでなく、とにかくなにもかもが黒く塗りつぶされたように真っ黒だった。
その黒が纏わり付くように体中を絡めとり、全く身動きがとれない。
視界にはギラギラと鈍く輝くもの、あれは目?
そうだ、恐ろしいまでに憎悪の篭った悪魔のような瞳がこちらを睨みつけている。
彼女は身の危険を感じ、必死にその黒い色から逃げ出そうとしていたが思うように体が動かず、
恐怖は増すばかりだった。
悲鳴にも似た魔物の咆哮が己の体を内側からバラバラに引き裂くように体内に響き渡り、
内臓、筋肉、血に至るまでが震えた。
自分は死ぬんだ。
咄嗟にそう思った。
彼女は必死に声にならない声を張り上げ、助けを求めた。
「!!!!」
ハっとして目を開けると、見慣れた天井が視界に入ってきた。
彼女は荒い息を整えながら今観ていたものが夢であってくれたことに酷く安堵していた。

なんてリアルな夢なの・・・
彼女はそう思いながら、フラフラとベッドから這い降りるとカーテンを捲り部屋を出た。
部屋を出た筈なのに何故かMiaの目の前には異形の者がいた。
夢の中では肌でしか感じられなかった魔物が、今、そこにいる。

うわあああっ!!

悲鳴をあげながら後に引っくり返りそうになり、慌ててカーテンを引っ掴んだ。
そこには不思議そうな顔つきでこちらを見ているおっさんがいた。
持っていた本から目を離し、老眼鏡を少し下にずらすと、早朝からおかしな行動をとっている彼女をまじまじと眺める。

Miaは最初の内は恐怖に引きつっていたが、自分の見間違いだということに気付き、気恥ずかしそうに苦笑を浮かべた。
「やだ、もう・・・、脅かさないでよ・・・」
胸を撫で下ろしながら、はぁ~・・・と大きく安堵の息を漏らしている。
「驚いた君にこっちが驚くわ」
彼女の見事な驚きっぷりに、おっさんの心臓も縮みあがったらしい。

「あはは・・・ごめん、ごめん。ちょっと嫌な夢見ちゃって・・・」
Miaは改めておっさんの姿を確かめていた。
当たり前だが、いつも通りの普通のおっさんだった。
さっき見たおっさんには角や羽、そして尻尾が生えており、瞳も魔物のような輝きを放っていた。
夢で見たあの恐ろしい目ととてもよく似ていたので、思わず悲鳴をあげてしまったのだ。
「あなたが化け物に見えたのよ」
「起きて早々、いきなりそれか。酷い言われようだな」
「いや、顔が怖いとかじゃなくて」
「私を追い詰めて楽しいか?さすがに傷つくぞ」
「だって、角とか羽が生えてたのよ?有り得ないでしょ??」
「・・・・・」
彼は途端に黙り込んだ。
今の彼女の言葉を受け、おっさんの態度があからさまに一変した。
神妙そうな面持ちで視線を床に落とす。
「・・・・え、何よ、その態度・・・」
思わせ振りなその態度に、Miaは肝を冷やした。
この沈黙はなんだろう?
彼女はドキドキしながら彼が次に何を口にするのかを固唾を呑んで待ち構えた。
十分な間をおいて、ゆっくりと顔を上げながら地の底から響いてくるような声色で彼は、
「・・・・どうして見えたんだ?君にはまやかしを打ち破る力でもあるのか?」
と言い、鋭い眼光で彼女を射抜くように凝視した。
まるで真実を見抜かれ後がなくなった犯罪者のような顔つきをしている。
「は!?」
その凄みのある表情に気おされたのか、彼女は口をポカンと開けながらあっけに取られていた。
「・・・私の角や羽は、脳筋女にしか見えないんだ。
いや、待てよ、起きているのに寝ていると勘違いしている奴にも見えていたかもな。」
おっさんがニヤリと口元を歪めた。
「君はそのどちらにも当てはまりそうだ。なら、見えて当然だな」
彼はひとりで笑うと再び本を見開き、文章に目を通しながら「顔でも洗って来い」とだけ告げた。
「ちょっ・・・・」
今のおっさんの1人芝居に度肝を抜かれていたMiaには、何が起こったのかよくわからなかった。
冷静になって考えてみると、どうやら自分はからかわれたらしい。
それがわかると、彼女は安堵しながらも呆れたように顔を歪め、おっさんに言い寄った。
「もーー・・・脅かさないでよ~~」
誰にでもわかるような見え透いた冗談なのに、一瞬でも本気にした自分はとてつもなくアホだ。
全く、どれだけ騙されやすいのよ・・・
Miaは渇いた笑いをしながら自分の馬鹿さ加減にがっかりしていた。
「本気にしたのか?」
おっさんが意外そうに、げっそりしている彼女を見ていた。
こんな子供騙しにまんまと引っ掛かるとは思いもしなかったのだ。
「うるさいな。寝起きにそういう冗談やめてくれる?怖い夢見たばかりだし、心臓に悪いわ」
「ふふっ、本気にしたのか。そうか」
クックック・・・
おっさんは満足そうにひとりで笑っている。
Miaはなんだかとてつもなく恥ずかしくなり、いてもたってもいられず、思わず声を荒げてしまった。

「もう!私をからかって楽しい!?」
「楽しいね。こんなに面白いリアクションをとるのは君くらいだ。」
「完全にオモチャじゃない。失礼しちゃうわねっ」
彼女はため息を付きながら苦笑している。
元々は自分が悪夢を見たことに起因しているのだから、おっさんを責める気にもなれなかった。
楽しそうに笑っているおっさんの顔を見たら、なんだかホっとした。
リアルな夢だったとはいえ、断片的過ぎてよくわからなかった。
覚えているのはあの異様に禍々しい目だけで、あとは何が怖かったのかさえわからない。
ただの夢だし、怖い夢なんていくらでも見るものだからと、あまり気にしないことにした。
というか、どうでもいいことだ。
「朝からごめんなさいね」
今になっておっさんに失礼なことを言ったような気がしたので、とりあえずあやまっておいた。
彼は口ではあんなことを言ってはいるが、全く意に介してないようだった。
「余程怖い夢だったようだな」
「うん、凄くね。」
「次見た時はあなたのベッドに潜り込んでもいいかしら?」
「で、また私の顔を見て悲鳴を上げるのか」
「ぬいぐるみでも抱いて寝ろ。」
「なによ、ケチ」ちぇっ
彼女は欠伸をしながらう~んと上に伸びた。
「さ~て、着替えてご飯にしよーっと」

そう告げると眠そうに目元を擦りながら自分の部屋へ着替えるために戻って行った。

おっさんは本から目を離し、去って行く彼女の後姿を思惑あり気に見つめていた。
-つづく-
第1話
黒しか見えない。
空間というものがまるでなく、とにかくなにもかもが黒く塗りつぶされたように真っ黒だった。
その黒が纏わり付くように体中を絡めとり、全く身動きがとれない。
視界にはギラギラと鈍く輝くもの、あれは目?
そうだ、恐ろしいまでに憎悪の篭った悪魔のような瞳がこちらを睨みつけている。
彼女は身の危険を感じ、必死にその黒い色から逃げ出そうとしていたが思うように体が動かず、
恐怖は増すばかりだった。
悲鳴にも似た魔物の咆哮が己の体を内側からバラバラに引き裂くように体内に響き渡り、
内臓、筋肉、血に至るまでが震えた。
自分は死ぬんだ。
咄嗟にそう思った。
彼女は必死に声にならない声を張り上げ、助けを求めた。
「!!!!」
ハっとして目を開けると、見慣れた天井が視界に入ってきた。
彼女は荒い息を整えながら今観ていたものが夢であってくれたことに酷く安堵していた。

なんてリアルな夢なの・・・
彼女はそう思いながら、フラフラとベッドから這い降りるとカーテンを捲り部屋を出た。
部屋を出た筈なのに何故かMiaの目の前には異形の者がいた。
夢の中では肌でしか感じられなかった魔物が、今、そこにいる。

うわあああっ!!

悲鳴をあげながら後に引っくり返りそうになり、慌ててカーテンを引っ掴んだ。
そこには不思議そうな顔つきでこちらを見ているおっさんがいた。
持っていた本から目を離し、老眼鏡を少し下にずらすと、早朝からおかしな行動をとっている彼女をまじまじと眺める。

Miaは最初の内は恐怖に引きつっていたが、自分の見間違いだということに気付き、気恥ずかしそうに苦笑を浮かべた。
「やだ、もう・・・、脅かさないでよ・・・」
胸を撫で下ろしながら、はぁ~・・・と大きく安堵の息を漏らしている。
「驚いた君にこっちが驚くわ」
彼女の見事な驚きっぷりに、おっさんの心臓も縮みあがったらしい。

「あはは・・・ごめん、ごめん。ちょっと嫌な夢見ちゃって・・・」
Miaは改めておっさんの姿を確かめていた。
当たり前だが、いつも通りの普通のおっさんだった。
さっき見たおっさんには角や羽、そして尻尾が生えており、瞳も魔物のような輝きを放っていた。
夢で見たあの恐ろしい目ととてもよく似ていたので、思わず悲鳴をあげてしまったのだ。
「あなたが化け物に見えたのよ」
「起きて早々、いきなりそれか。酷い言われようだな」
「いや、顔が怖いとかじゃなくて」
「私を追い詰めて楽しいか?さすがに傷つくぞ」
「だって、角とか羽が生えてたのよ?有り得ないでしょ??」
「・・・・・」
彼は途端に黙り込んだ。
今の彼女の言葉を受け、おっさんの態度があからさまに一変した。
神妙そうな面持ちで視線を床に落とす。
「・・・・え、何よ、その態度・・・」
思わせ振りなその態度に、Miaは肝を冷やした。
この沈黙はなんだろう?
彼女はドキドキしながら彼が次に何を口にするのかを固唾を呑んで待ち構えた。
十分な間をおいて、ゆっくりと顔を上げながら地の底から響いてくるような声色で彼は、
「・・・・どうして見えたんだ?君にはまやかしを打ち破る力でもあるのか?」
と言い、鋭い眼光で彼女を射抜くように凝視した。
まるで真実を見抜かれ後がなくなった犯罪者のような顔つきをしている。
「は!?」
その凄みのある表情に気おされたのか、彼女は口をポカンと開けながらあっけに取られていた。
「・・・私の角や羽は、脳筋女にしか見えないんだ。
いや、待てよ、起きているのに寝ていると勘違いしている奴にも見えていたかもな。」
おっさんがニヤリと口元を歪めた。
「君はそのどちらにも当てはまりそうだ。なら、見えて当然だな」
彼はひとりで笑うと再び本を見開き、文章に目を通しながら「顔でも洗って来い」とだけ告げた。
「ちょっ・・・・」
今のおっさんの1人芝居に度肝を抜かれていたMiaには、何が起こったのかよくわからなかった。
冷静になって考えてみると、どうやら自分はからかわれたらしい。
それがわかると、彼女は安堵しながらも呆れたように顔を歪め、おっさんに言い寄った。
「もーー・・・脅かさないでよ~~」
誰にでもわかるような見え透いた冗談なのに、一瞬でも本気にした自分はとてつもなくアホだ。
全く、どれだけ騙されやすいのよ・・・
Miaは渇いた笑いをしながら自分の馬鹿さ加減にがっかりしていた。
「本気にしたのか?」
おっさんが意外そうに、げっそりしている彼女を見ていた。
こんな子供騙しにまんまと引っ掛かるとは思いもしなかったのだ。
「うるさいな。寝起きにそういう冗談やめてくれる?怖い夢見たばかりだし、心臓に悪いわ」
「ふふっ、本気にしたのか。そうか」
クックック・・・
おっさんは満足そうにひとりで笑っている。
Miaはなんだかとてつもなく恥ずかしくなり、いてもたってもいられず、思わず声を荒げてしまった。

「もう!私をからかって楽しい!?」
「楽しいね。こんなに面白いリアクションをとるのは君くらいだ。」
「完全にオモチャじゃない。失礼しちゃうわねっ」
彼女はため息を付きながら苦笑している。
元々は自分が悪夢を見たことに起因しているのだから、おっさんを責める気にもなれなかった。
楽しそうに笑っているおっさんの顔を見たら、なんだかホっとした。
リアルな夢だったとはいえ、断片的過ぎてよくわからなかった。
覚えているのはあの異様に禍々しい目だけで、あとは何が怖かったのかさえわからない。
ただの夢だし、怖い夢なんていくらでも見るものだからと、あまり気にしないことにした。
というか、どうでもいいことだ。
「朝からごめんなさいね」
今になっておっさんに失礼なことを言ったような気がしたので、とりあえずあやまっておいた。
彼は口ではあんなことを言ってはいるが、全く意に介してないようだった。
「余程怖い夢だったようだな」
「うん、凄くね。」
「次見た時はあなたのベッドに潜り込んでもいいかしら?」
「で、また私の顔を見て悲鳴を上げるのか」
「ぬいぐるみでも抱いて寝ろ。」
「なによ、ケチ」ちぇっ
彼女は欠伸をしながらう~んと上に伸びた。
「さ~て、着替えてご飯にしよーっと」

そう告げると眠そうに目元を擦りながら自分の部屋へ着替えるために戻って行った。

おっさんは本から目を離し、去って行く彼女の後姿を思惑あり気に見つめていた。
-つづく-