ゆるゆるOblivion
Oblivion妄想RP日記です。渋親父率高いので、加齢臭漂ってます
英雄の条件~第2話
○英雄(ヒーロー)の条件○
第2話

おっさんが朝食をとるため階下へ降りていくと、玄関前でEyjaが誰かと話をしている最中だった。
「あぁ!旦那様、お早うございます」
Azazelが現れたおかげで急場をしのげた様子のEyja。
相手は見知らぬ女性だった。
眼鏡をかけローブをまとっているその姿は、誰がどう見ても魔法使いとしか思えない風貌だ。
しかもそのローブの中央にはArcane University(魔術大学)の文様が描かれていた。
Azazelは何故そんな人物が我が家を訪ねて来たのか不思議に思った。
「客人か?」
「ええ、旦那様、それが・・・」
Eyjaが説明しようとするのを遮るように、見知らぬ女性が声を発した。
「あなたがここの御主人ですか?・・・あなたがMia?」
ジロジロとおっさんの姿を確認した後、小首を傾げながら意外そうに彼を見つめている。

「Kvatchの英雄は女性だと聞き及んでおりましたが、まさかこんな枯れたおじ様だとは・・・」
Eyjaとおっさんは言葉を失ったまま暫く顔を見合せていた。
そんなことはおかまいなしに女性は話を続けた。
「私はArcane Universityに席を置いているClaudia(クラウディア)という者です。
あなたに大切なお話があるのでお時間を割いていただきたいのですが、宜しいでしょうか?」
「別にかまわんが・・・」
おっさんはそう言いながら彼女から目を背けた。
「彼女はどうかな」

Claudiaが釣られる様におっさんの視線の先を追うと、大欠伸をしながらMiaが階段を降りて来る所だった。
話し込んでいるこちらに気付いたのか、大きく開けた口元を慌てて手で覆い、照れ隠しにえへへと笑っていた。
「Mia、君に客人だ」
「私に?」
Miaは玄関前にいる眼鏡姿の女性に全く見覚えがなかった。
誰だろう?とボーっとしながら考え込んでいると、おっさんの鋭い声が飛んできた。
「その前に顔を洗って来い」
Miaはおっさんの言う通りにするしかなかった。
寝起き姿のままでは失礼に当たると、さすがの彼女でも思ったのだ。
----------------------------------------
「お待たせしました。それで、私に何の用でしょう?」

洗顔を終えたMiaはようやく眠気から解放されていた。
ただ、朝食がまだなのでお腹が空いて仕方なかった。
ぐう~・・・という腹の虫を鳴らしながら、早朝からの見知らぬ客に多少の不安を感じつつも、
とりあえず話を聞くことにした。
「あなた、御自分がArch-Mageだということを自覚なさっておいでかしら?」
「ええ、まあ、一応・・・」
「なら何故御自分が成さなければならない事柄を放っていらっしゃるの?
あなたのせいで、Arcane University内の仕事が滞っていることくらい、わかりそうなものなんじゃなくって?」
「あれ?おかしいな、その辺は全部Raminusに任せてある筈なんですけど・・・」
Master-WizardであるRaminusはMiaの連絡係を受け持ってくれていた。
どうしても彼女の力が必要な時、彼が何かしらの手段を使ってあらゆる場所に連絡をよこすのだ。
Mages Guild は基本的に個々が勝手に行動していることが多いので、ギルドマスターであるMiaがいなくてもたいして困ることは無い。
だからMiaも渋々その地位に甘んじているのだ。

「任す?Arch-Mageでなければならないお仕事まで、すべてお任せになられているの?」
「あなたの存在意味はなにかしら?ただのお飾りなの?」
Claudiaが発する言葉の端々には棘があった。
どうもMiaをよく思ってないらしい。
敵意剥き出しで怖い顔をしながら話を続けている。
(うぅ・・・怖い人だな~・・・)
Miaは萎縮しながらも彼女の話に耳を傾けていた。
初対面な相手にこんなにツンケン言われるなんて思いもしなかった。
とても苦手なタイプだ。

それにしても朝からなんてツイてないんだろう。
悪夢にもうなされ、今日はとてもじゃないが良い一日にはなりそうになかった。
Miaは酷く落ち込み始めていた。
「私がこんな朝早くからこちらを伺ったのには理由があるのです」
「あなたはあまりにもやらなければならないことを放置し過ぎです。ほとほと待ちくたびれてしまいましたわ」
彼女はキっとMiaを睨みつけると、より一層強い口調で責めるように詰め寄った。
「あなたのせいで、私の昇進は先延ばしです。書類にサインをするだけの簡単な作業なのに、
それすらもお出来にならないの!?」
あまりの迫力にMiaは圧倒されたまま固まるしかなかった。
Claudiaは鼻から大きく息をつくと、今の勢いが嘘だったかのように静かに彼女の返事を待っていた。

「・・・ご、ごめんなさい」
ドギマギしながらもMiaは頭を下げ、たどたどしい口調で謝罪の意を述べた。
今謝っておかないと事態が悪化してしまうような気がしたのだ。
というか、この女性をこれ以上怒らせたら自分が泣いちゃいそうな気がする。
「用がある時は呼び出すようにとRaminusに頼んであるんですけど・・・、その、何もなかったので仕事はないのかな~?なんて・・・」
こんな言い訳をしたら彼女の気持ちを逆撫でしてしまうような気もするが、本当のことだから仕方ない。
「昇進なんて私がいなくても出来るものだと思ってました。そんなのRaminusが目を通せば終わりだと・・・」
「そんなの?」
「今、なんとおっしゃいました?そんなの?そんなのとはどういう意味かしら。
たいした事ではないと、仰りたいの?」
言葉尻を掴んで再び彼女の語気が荒くなった。
気に障ったらしい。
Miaは慌てて否定した。
「あっ、いやっ、そうじゃなくて(汗)」
「私みたいな力もないのに指名されただけでマスターの地位にいる者が、
あきらかに私よりも偉大な方々の人生を左右するような書類にサインするなんておこがましいと思ったものですから・・・」
「その通りです。あなたは先代のArch-Mage、今は亡きHannibal Travenの命を受けてその地位に納まっただけの人間です」
「はぁ・・・、申し訳ないです・・・」
ひたすら低姿勢を貫くMia。
空腹も限界に達しそうだし、とにかく話を早く終わらせたかった。
「皆、Hannibalの指名だからとあなたを認めているようですが、私は違います。
たとえあなたがKvatchの英雄だとしても、魔術の力が如何程なのか、この目で確かめたこともないのに認めるわけには参りませんもの」
「力の無い者にはその資格がないことくらい、おわかりでしょう?」
「・・・・」
Miaは何も言えなくなってしまった。
彼女の言うことはもっともだと感じたのだ。
だから、最初からこの地位につく事を頑なに拒んだ。
なのに無理矢理着かされたばかりに、こんな面倒臭い事態に巻き込まれてしまうなんて。
こんなことはFighters Guildだけで沢山だった。
「どうかなさいました?」
押し黙ってしまったMiaに気付き、不思議そうに眺めている。
「・・・あの、実は私、Arch-Mageとは名ばかりで、実際ほとんど魔法使えないんです・・・」
「使えないのに指名されたと?」
「ええ・・・」
Claudiaは途端に思案顔になると、自分の世界に入ってしまったのか、暫く何も話さずに一点を見つめたまま動かなくなってしまった。
数分後、ようやく考えがまとまったのか、静かに口を開いた。
「・・・とにかく、書類にサインだけお願いします。それと・・・・」
改めてMiaに向き直ると、真剣な顔つきで彼女を見据えこう続けた。
「時間のある日でかまいませんので、あなたの力を見せていただけませんか?」
「別にかまいませんけど・・・」
Claudiaは頷くと席を立った。
「なるべく早くArcane Universityへおいで下さい。皆、迷惑しているのですから」
「早朝からお邪魔して申し訳ありませんでした。失礼をお許し下さい。」
「では、ごきげんよう」

・
・
・
・
・
・
・
彼女を見送ると、Miaは玄関口で大きく息をつきながら疲れたようにうなだれていた。
(朝からなんてしんどいの・・・)
寝起きで、その上に空腹という、一日の内で最も無防備な時間を狙ってやってきた彼女。
恐ろしく計算高い女性だ。
まだ何もしていないのに、今日一日の体力をすべて使い果たしてしまったような気がする。
Miaはこのまま仕事に行くのを止め、暖かいベッドでもう一眠りしたい衝動に駆られていた。

ぐったりと扉に手を着いたまま動かない彼女の元へ、朝食を終えたおっさんが近付いてきた。
彼は半笑いだった。
「君にも苦手なものがあるんだな」
「あなたのおかげでキツイ言葉には慣れてるんだけどね」
「・・・女性からっていうのがね・・・」
彼女にとって同性からの厳しい言動は、異性に言われるよりも素直に受け止めてしまうため、ダメージが大きいのだ。
異性と違って距離を取らずに接してしまうので、より一層言葉が強く気持ちを揺らしてしまう。
だからおっさんからはわりかし何を言われてもある程度我慢出来るのだが、相手が女性というだけでそうはいかなくなる。
「しかも、初対面なのよ?どう接していいかわからないのに、ずけずけと厳しいことばかり言うんだもの・・・」
「なんかもう、泣いちゃいそう」
Miaはしょぼんと肩を落とすと、子供のように唇を尖らせふてくされた。
「二束の草鞋など履くからだ」
「仕方ないでしょ。断ったのに、しつこく頼まれちゃったんだもの・・・」
戦士ギルドのマスターだけでなく、魔術ギルドのマスターまで引き受けているのだ。
どう考えてもさばききれる仕事量ではない。
おっさんには彼女の考えが浅墓過ぎて、自業自得にしか思えなかった。
「頼まれたら何でも引き受けるのか?」
「そんなことないわよ」
「なら、どうして引き受けた」
「決まってるじゃない、有名になりたかったからよ」
「仕事もロクにこなせんのに、立派なものだな」
Miaはムっとした表情でおっさんを睨んだ。
「うっさいな。もうわかってるんだから、それ以上言わないで」
「みんな私が悪いのよ。出来もしないことをホイホイ引き受けちゃう私が悪いの。
断りきれなかった私が悪いのよ。
これで満足?」
強い語気で捲くし立てるように言い放った。
自分が悪いことくらい百も承知だ。
もう、これ以上誰かに責められるのは耐えられなかった。
「何をそんなに怒ってるんだ。私に当たらんでくれ。」
「別に怒ってなんかいないわよ。もう!おっさんなんか知らない!」
そう言って彼女は、朝食を取るため大股でその場を去って行った。
呆然と突っ立っているおっさんの傍へそっとEyjaが寄ってきた。
「今のは旦那様が悪いですよ」
そう一言言い残すと、Miaのために紅茶を運んで行った。

(・・・・まるで私が悪人のようじゃないか・・・・)

腑に落ちないが、反論した所で誰も耳を貸さないだろう。
おっさんは何事もなかった事にして、とっとと身支度して仕事に出掛けることにした。
第2話

おっさんが朝食をとるため階下へ降りていくと、玄関前でEyjaが誰かと話をしている最中だった。
「あぁ!旦那様、お早うございます」
Azazelが現れたおかげで急場をしのげた様子のEyja。
相手は見知らぬ女性だった。
眼鏡をかけローブをまとっているその姿は、誰がどう見ても魔法使いとしか思えない風貌だ。
しかもそのローブの中央にはArcane University(魔術大学)の文様が描かれていた。
Azazelは何故そんな人物が我が家を訪ねて来たのか不思議に思った。
「客人か?」
「ええ、旦那様、それが・・・」
Eyjaが説明しようとするのを遮るように、見知らぬ女性が声を発した。
「あなたがここの御主人ですか?・・・あなたがMia?」
ジロジロとおっさんの姿を確認した後、小首を傾げながら意外そうに彼を見つめている。

「Kvatchの英雄は女性だと聞き及んでおりましたが、まさかこんな枯れたおじ様だとは・・・」
Eyjaとおっさんは言葉を失ったまま暫く顔を見合せていた。
そんなことはおかまいなしに女性は話を続けた。
「私はArcane Universityに席を置いているClaudia(クラウディア)という者です。
あなたに大切なお話があるのでお時間を割いていただきたいのですが、宜しいでしょうか?」
「別にかまわんが・・・」
おっさんはそう言いながら彼女から目を背けた。
「彼女はどうかな」

Claudiaが釣られる様におっさんの視線の先を追うと、大欠伸をしながらMiaが階段を降りて来る所だった。
話し込んでいるこちらに気付いたのか、大きく開けた口元を慌てて手で覆い、照れ隠しにえへへと笑っていた。
「Mia、君に客人だ」
「私に?」
Miaは玄関前にいる眼鏡姿の女性に全く見覚えがなかった。
誰だろう?とボーっとしながら考え込んでいると、おっさんの鋭い声が飛んできた。
「その前に顔を洗って来い」
Miaはおっさんの言う通りにするしかなかった。
寝起き姿のままでは失礼に当たると、さすがの彼女でも思ったのだ。
----------------------------------------
「お待たせしました。それで、私に何の用でしょう?」

洗顔を終えたMiaはようやく眠気から解放されていた。
ただ、朝食がまだなのでお腹が空いて仕方なかった。
ぐう~・・・という腹の虫を鳴らしながら、早朝からの見知らぬ客に多少の不安を感じつつも、
とりあえず話を聞くことにした。
「あなた、御自分がArch-Mageだということを自覚なさっておいでかしら?」
「ええ、まあ、一応・・・」
「なら何故御自分が成さなければならない事柄を放っていらっしゃるの?
あなたのせいで、Arcane University内の仕事が滞っていることくらい、わかりそうなものなんじゃなくって?」
「あれ?おかしいな、その辺は全部Raminusに任せてある筈なんですけど・・・」
Master-WizardであるRaminusはMiaの連絡係を受け持ってくれていた。
どうしても彼女の力が必要な時、彼が何かしらの手段を使ってあらゆる場所に連絡をよこすのだ。
Mages Guild は基本的に個々が勝手に行動していることが多いので、ギルドマスターであるMiaがいなくてもたいして困ることは無い。
だからMiaも渋々その地位に甘んじているのだ。

「任す?Arch-Mageでなければならないお仕事まで、すべてお任せになられているの?」
「あなたの存在意味はなにかしら?ただのお飾りなの?」
Claudiaが発する言葉の端々には棘があった。
どうもMiaをよく思ってないらしい。
敵意剥き出しで怖い顔をしながら話を続けている。
(うぅ・・・怖い人だな~・・・)
Miaは萎縮しながらも彼女の話に耳を傾けていた。
初対面な相手にこんなにツンケン言われるなんて思いもしなかった。
とても苦手なタイプだ。

それにしても朝からなんてツイてないんだろう。
悪夢にもうなされ、今日はとてもじゃないが良い一日にはなりそうになかった。
Miaは酷く落ち込み始めていた。
「私がこんな朝早くからこちらを伺ったのには理由があるのです」
「あなたはあまりにもやらなければならないことを放置し過ぎです。ほとほと待ちくたびれてしまいましたわ」
彼女はキっとMiaを睨みつけると、より一層強い口調で責めるように詰め寄った。
「あなたのせいで、私の昇進は先延ばしです。書類にサインをするだけの簡単な作業なのに、
それすらもお出来にならないの!?」
あまりの迫力にMiaは圧倒されたまま固まるしかなかった。
Claudiaは鼻から大きく息をつくと、今の勢いが嘘だったかのように静かに彼女の返事を待っていた。

「・・・ご、ごめんなさい」
ドギマギしながらもMiaは頭を下げ、たどたどしい口調で謝罪の意を述べた。
今謝っておかないと事態が悪化してしまうような気がしたのだ。
というか、この女性をこれ以上怒らせたら自分が泣いちゃいそうな気がする。
「用がある時は呼び出すようにとRaminusに頼んであるんですけど・・・、その、何もなかったので仕事はないのかな~?なんて・・・」
こんな言い訳をしたら彼女の気持ちを逆撫でしてしまうような気もするが、本当のことだから仕方ない。
「昇進なんて私がいなくても出来るものだと思ってました。そんなのRaminusが目を通せば終わりだと・・・」
「そんなの?」
「今、なんとおっしゃいました?そんなの?そんなのとはどういう意味かしら。
たいした事ではないと、仰りたいの?」
言葉尻を掴んで再び彼女の語気が荒くなった。
気に障ったらしい。
Miaは慌てて否定した。
「あっ、いやっ、そうじゃなくて(汗)」
「私みたいな力もないのに指名されただけでマスターの地位にいる者が、
あきらかに私よりも偉大な方々の人生を左右するような書類にサインするなんておこがましいと思ったものですから・・・」
「その通りです。あなたは先代のArch-Mage、今は亡きHannibal Travenの命を受けてその地位に納まっただけの人間です」
「はぁ・・・、申し訳ないです・・・」
ひたすら低姿勢を貫くMia。
空腹も限界に達しそうだし、とにかく話を早く終わらせたかった。
「皆、Hannibalの指名だからとあなたを認めているようですが、私は違います。
たとえあなたがKvatchの英雄だとしても、魔術の力が如何程なのか、この目で確かめたこともないのに認めるわけには参りませんもの」
「力の無い者にはその資格がないことくらい、おわかりでしょう?」
「・・・・」
Miaは何も言えなくなってしまった。
彼女の言うことはもっともだと感じたのだ。
だから、最初からこの地位につく事を頑なに拒んだ。
なのに無理矢理着かされたばかりに、こんな面倒臭い事態に巻き込まれてしまうなんて。
こんなことはFighters Guildだけで沢山だった。
「どうかなさいました?」
押し黙ってしまったMiaに気付き、不思議そうに眺めている。
「・・・あの、実は私、Arch-Mageとは名ばかりで、実際ほとんど魔法使えないんです・・・」
「使えないのに指名されたと?」
「ええ・・・」
Claudiaは途端に思案顔になると、自分の世界に入ってしまったのか、暫く何も話さずに一点を見つめたまま動かなくなってしまった。
数分後、ようやく考えがまとまったのか、静かに口を開いた。
「・・・とにかく、書類にサインだけお願いします。それと・・・・」
改めてMiaに向き直ると、真剣な顔つきで彼女を見据えこう続けた。
「時間のある日でかまいませんので、あなたの力を見せていただけませんか?」
「別にかまいませんけど・・・」
Claudiaは頷くと席を立った。
「なるべく早くArcane Universityへおいで下さい。皆、迷惑しているのですから」
「早朝からお邪魔して申し訳ありませんでした。失礼をお許し下さい。」
「では、ごきげんよう」

・
・
・
・
・
・
・
彼女を見送ると、Miaは玄関口で大きく息をつきながら疲れたようにうなだれていた。
(朝からなんてしんどいの・・・)
寝起きで、その上に空腹という、一日の内で最も無防備な時間を狙ってやってきた彼女。
恐ろしく計算高い女性だ。
まだ何もしていないのに、今日一日の体力をすべて使い果たしてしまったような気がする。
Miaはこのまま仕事に行くのを止め、暖かいベッドでもう一眠りしたい衝動に駆られていた。

ぐったりと扉に手を着いたまま動かない彼女の元へ、朝食を終えたおっさんが近付いてきた。
彼は半笑いだった。
「君にも苦手なものがあるんだな」
「あなたのおかげでキツイ言葉には慣れてるんだけどね」
「・・・女性からっていうのがね・・・」
彼女にとって同性からの厳しい言動は、異性に言われるよりも素直に受け止めてしまうため、ダメージが大きいのだ。
異性と違って距離を取らずに接してしまうので、より一層言葉が強く気持ちを揺らしてしまう。
だからおっさんからはわりかし何を言われてもある程度我慢出来るのだが、相手が女性というだけでそうはいかなくなる。
「しかも、初対面なのよ?どう接していいかわからないのに、ずけずけと厳しいことばかり言うんだもの・・・」
「なんかもう、泣いちゃいそう」
Miaはしょぼんと肩を落とすと、子供のように唇を尖らせふてくされた。
「二束の草鞋など履くからだ」
「仕方ないでしょ。断ったのに、しつこく頼まれちゃったんだもの・・・」
戦士ギルドのマスターだけでなく、魔術ギルドのマスターまで引き受けているのだ。
どう考えてもさばききれる仕事量ではない。
おっさんには彼女の考えが浅墓過ぎて、自業自得にしか思えなかった。
「頼まれたら何でも引き受けるのか?」
「そんなことないわよ」
「なら、どうして引き受けた」
「決まってるじゃない、有名になりたかったからよ」
「仕事もロクにこなせんのに、立派なものだな」
Miaはムっとした表情でおっさんを睨んだ。
「うっさいな。もうわかってるんだから、それ以上言わないで」
「みんな私が悪いのよ。出来もしないことをホイホイ引き受けちゃう私が悪いの。
断りきれなかった私が悪いのよ。
これで満足?」
強い語気で捲くし立てるように言い放った。
自分が悪いことくらい百も承知だ。
もう、これ以上誰かに責められるのは耐えられなかった。
「何をそんなに怒ってるんだ。私に当たらんでくれ。」
「別に怒ってなんかいないわよ。もう!おっさんなんか知らない!」
そう言って彼女は、朝食を取るため大股でその場を去って行った。
呆然と突っ立っているおっさんの傍へそっとEyjaが寄ってきた。
「今のは旦那様が悪いですよ」
そう一言言い残すと、Miaのために紅茶を運んで行った。

(・・・・まるで私が悪人のようじゃないか・・・・)

腑に落ちないが、反論した所で誰も耳を貸さないだろう。
おっさんは何事もなかった事にして、とっとと身支度して仕事に出掛けることにした。