ゆるゆるOblivion
Oblivion妄想RP日記です。渋親父率高いので、加齢臭漂ってます
英雄の条件~第8話
○英雄(ヒーロー)の条件○
第8話
MiaはRichardが叩き直した剣を数本眺めながらその完成度を見定めていた。
真剣な顔つきで刀身を嘗め回すように見つめている。
「・・・いかがでしょう・・・」
Richardは緊張した面持ちで彼女の答えを待っていた。

対価のある初めての仕事だ。
まだ一人前といえる立場ではないが、お金を貰う以上、ひとりの職人として恥ずかしくない仕事をしたかった。
自分自身では必死にやったつもりだ。
だが、それが独り善がりだとしたら全く意味が無い。
彼は生唾を飲み込みながら、彼女から目を離さずにただひたすら待ち続けている。
「俺はいいと思うけどな。よく出来てんじゃねーか?」

chevが中々決断を下さないMiaに痺れを切らしたのか先に意見を述べた。
床にはまだ修理の終わっていない武器が沢山転がっているが、これでも大分減った方だ。
この数週間の間にここまで出来ればたいしたものだ。
「ありがとうございます、chevさん」
「店での仕事もあるのにお前はよくやってるよ」
chevは感心したように笑顔でそう言ってくれた。
照れ臭そうに俯きながら笑うRichard。

「・・・・う~ん・・・・・」
長い間沈黙を守っていた彼女が不満げな声をあげた。
笑顔だったRichardの表情が一瞬で凍りつき、不安そうに彼女に向き直った。
「・・・・ちゃんと修理できてるのもあるんだけど、ちょっとこれ見てくれる?」
彼女はchevに持っている剣の刀身を見せ、気になる部分を示した。
「ここだけやけに刃が薄いと思わない?」
「うーん・・・、そう言われるとそんな気が・・・」
一目見ただけでは自分の目では判断できなかった。
chevは格闘技がメインなので、実は武器などにはそんなに詳しくないのだ。

彼女は数本の剣を引き合いに出し、駄目だしを続けた。
RichardはMiaの的確な指摘に納得せざるを得なかった。
自分の未熟さが身に沁みてわかり、がっくりと肩を落としながら彼女の話に耳を傾けた。
「なんか完成度にムラがあるのよね。良い物もあれば、悪い物もある。それじゃ困るのよ」
Miaは真剣な表情でRichardの瞳を見つめながらさらに続けた。
「戦士ギルドのメンバーはここで修理された物を使って生死を賭けた戦いに赴くこともあるの。
自分の身を唯一守ってくれる武器が中途半端な品物だったらどうなると思う?
考えないでもわかるわよね?」
Richardは彼女の言葉にハっとした。
自分が受けた仕事が自分が思っている以上に重みのある仕事だということに、今やっと気が付いた。
人の命を預かっているということと同じなのだ。
彼女の話を聞くまで彼はそれに気付きもしなかった。
ただ鉄を打ち、良い物を作れればいいと思っていた。
自分の仕事を他人に認められたくて、とにかくうまく形になればいいとだけ思っていた。
こういう形で使ってもらいたいなどと、武器側からの視点でしか考えたことがなかった。
これを使う人の気持ちなど、今まで一度も考えたことが無かったのだ。
彼の顔は見る見るうちに青ざめ、今にも泣き出してしまいそうだった。
chevがさすがに哀れに思ったのか、助け舟を出そうとしたがMiaが追い討ちをかけるようにさらに厳しい言葉を浴びせた。
「こんな物使えないわ。あなたの腕前を信じた私が間違っていたようね。」
彼女はぽいっと剣をその辺に放った。
ガシャーンと硬い物が床に打ち付けられる音が室内に響き渡る。
その音が吸い込まれるように止むと、場内は水を打ったように静まり返っていた。
あまりにも緊迫した空気感に耐え切れなくなり、chevが恐る恐る口を開いた。
「・・・そう言うけどよ、結構頑張ってると思うぜ・・・?」
Miaがチラリとchevを横目で見た。
「そうね、よく頑張ってるとは思うわ」
「ねえ、手を見せてくれる?」
暗く落ち込んでいるRichardが言われるがままに力無く手を差し出した。
彼女は優しくそれをとると、掌が上になるよう返した。
その手は以前見たものとは別物のようになっていた。
「・・・・ちょっと前まではあんなに綺麗な手をしていたのにね・・・・」
今では豆が何度も潰れ、ボロボロになっていた。
至る所にタコができ、皮膚も硬くなっている。
少し前まではMiaの手よりも美しく滑らかな手をしていたのに、今では見る影も無かった。
「痛くない?」
「・・・薬を塗ってるので大丈夫です」
「そう」
「でも、あまり無理はしないでね」
彼女は彼に痛みを感じさせないよう、極力優しく掌を撫でると手を離した。
「こんな手になっちゃったけど、まだやる気はある?」
「・・・やらせて貰えるんですか・・・?」
厳しい駄目出しを受け、てっきりもうクビになったものだとばかり思っていた。
「やる気があるなら続けて欲しいんだけど、どうかな?」
「ちゃんと使えそうな物がいくつかあるし、駄目な物はもう一度鍛え直せばいいんじゃない?」
「やっ、やります。是非、やらせて下さい。」

「良かった。それじゃあ、出来の良いものを数本引き取るから、仕事が一段落したら上に来てくれる?
支払いはその時に、ね。」
彼女はニコっと微笑んだ。

「はっ、はい!」
Richardがあまりにも嬉しそうに返事をするので、chevは思わず吹き出してしまった。
「ちょっとお前、なんだよその変わり様はよ。さっきまであんなに泣きそうなツラしてたのに」

「仕方ないでしょ、自己嫌悪にどん底まで落ち込んでいたんですから。泣きそうにだってなります・・・」
「全く、立ち直りの早い奴だな」
Richardはいつものように少し照れ臭そうに笑っていた。
---------------------------------------
二人は鍛冶場を離れ上の階に戻ると、一息つくため食堂で水を飲んでいた。

「・・・・さっきのギルマス、なんだかおっさんみたいだったな」
「ぶっ」
思わず水を吹きこぼしそうになるMia。
口の端から垂れてしまった水を拭いながら反論に出る。
「それ、どういう意味?私が親父臭いってこと?!」
「Azazelのおっさんに言動がよく似てたぜ」

「やだ、やめてよ。一体どこが似てるって言うのよ」
彼女はとても嫌そうにしている。

「どん底まで突き落として、最後に持ち上げてやる気にさせる。古いやり方だが、効果あるよな。
あんた散々おっさんに絞られてるんだろ?知らねー内に手口を覚えちまったんじゃねーのか?」
「長く一緒にいると色々似てくるっていうしな」
彼はニヤリと含み笑いを浮かべながら意味ありげにそう言った。
「嫌なこと言わないでよ。あのおっさんの言い草は気に入らないことの方が多いんだから・・・」
確かにおっさんとは比較的付き合いが長く、同じ家で暮らしているのだから一緒にいる時間も多い。
自覚はなかったが、chevに指摘されて先程の事を思い返してみると確かに言い方がAzazelのそれと似ていると感じた。
よりにもよって、一番似たくない部分が伝染ってきているなんて・・・。
彼女にとってはとてもショックなことだった。
「・・・ちょっと言い方キツかったかな・・・。悪いことしちゃったな・・・」
おっさんの言動とよく似ていたということは、かなりキツイ口調だった筈だ。
いつも嫌な思いをしている自分自身の気持ちを考え、Richardも同じような思いをしているのではないかと急に不安になった。

「気にすんな。あいつかなりやる気になってたぜ?うまくいったってことさ」
「俺はてっきり、わざとそうしたのかと思ってたよ」
「違うわよ。思ったことをそのまま言っただけよ」
「っつーことは、かなり重症だな」
「ああ・・・やめて・・・、マジでヘコむわ・・・」
Miaはげっそりとした様子でテーブルに手を着いた。
「なんだよ、あんなにおっさんに懐いてるくせに、なんだか嫌そうだな」
「別に懐いてなんかいないし、似たいとも思わないわよ。むしろ反面教師だと思ってるんだから」
「へー」
完全に棒読み調の”へー”。
Miaの脳髄にカチンコチンきた。
「何か御不満が?」
chevを威嚇しながら睨みつけた。
彼はおどけた様に「別にー」と言うと、逃げるようにその場を立ち去った。

Miaは内心グログロしながらコップの中の水を一気に飲み干した。
:::::::::::::::::::::::
-それから一ヵ月半後-
溜まっていた武器類の修理が無事終了した。
Richardの腕前もかなり上がり、その出来にMia達は満足気だった。
元々の戦士ギルド専属鍛冶屋の怪我も完治したので、約束通りの報酬が支払われると、
彼の仕事は完全に終わりを告げた。
::::::::::::::::::::::
-つづく-
-----------------------------------
大分間があいてしまいました(汗)
沢山やりたい事はあるのに、暑いと何もする気が起きないんですよね~><
私もやる気スイッチを押して欲しいです。
なんか写真もいつも同じような構図ばかりで困っちゃいます・・・。
クセで人物を右寄りにして撮影しちゃうみたいです。
イカンね~、センスが欲しいわ~(涙)
このお話も後少しで終わります。
もう少しお付き合い下さいませ。
第8話
MiaはRichardが叩き直した剣を数本眺めながらその完成度を見定めていた。
真剣な顔つきで刀身を嘗め回すように見つめている。
「・・・いかがでしょう・・・」
Richardは緊張した面持ちで彼女の答えを待っていた。

対価のある初めての仕事だ。
まだ一人前といえる立場ではないが、お金を貰う以上、ひとりの職人として恥ずかしくない仕事をしたかった。
自分自身では必死にやったつもりだ。
だが、それが独り善がりだとしたら全く意味が無い。
彼は生唾を飲み込みながら、彼女から目を離さずにただひたすら待ち続けている。
「俺はいいと思うけどな。よく出来てんじゃねーか?」

chevが中々決断を下さないMiaに痺れを切らしたのか先に意見を述べた。
床にはまだ修理の終わっていない武器が沢山転がっているが、これでも大分減った方だ。
この数週間の間にここまで出来ればたいしたものだ。
「ありがとうございます、chevさん」
「店での仕事もあるのにお前はよくやってるよ」
chevは感心したように笑顔でそう言ってくれた。
照れ臭そうに俯きながら笑うRichard。

「・・・・う~ん・・・・・」
長い間沈黙を守っていた彼女が不満げな声をあげた。
笑顔だったRichardの表情が一瞬で凍りつき、不安そうに彼女に向き直った。
「・・・・ちゃんと修理できてるのもあるんだけど、ちょっとこれ見てくれる?」
彼女はchevに持っている剣の刀身を見せ、気になる部分を示した。
「ここだけやけに刃が薄いと思わない?」
「うーん・・・、そう言われるとそんな気が・・・」
一目見ただけでは自分の目では判断できなかった。
chevは格闘技がメインなので、実は武器などにはそんなに詳しくないのだ。

彼女は数本の剣を引き合いに出し、駄目だしを続けた。
RichardはMiaの的確な指摘に納得せざるを得なかった。
自分の未熟さが身に沁みてわかり、がっくりと肩を落としながら彼女の話に耳を傾けた。
「なんか完成度にムラがあるのよね。良い物もあれば、悪い物もある。それじゃ困るのよ」
Miaは真剣な表情でRichardの瞳を見つめながらさらに続けた。
「戦士ギルドのメンバーはここで修理された物を使って生死を賭けた戦いに赴くこともあるの。
自分の身を唯一守ってくれる武器が中途半端な品物だったらどうなると思う?
考えないでもわかるわよね?」
Richardは彼女の言葉にハっとした。
自分が受けた仕事が自分が思っている以上に重みのある仕事だということに、今やっと気が付いた。
人の命を預かっているということと同じなのだ。
彼女の話を聞くまで彼はそれに気付きもしなかった。
ただ鉄を打ち、良い物を作れればいいと思っていた。
自分の仕事を他人に認められたくて、とにかくうまく形になればいいとだけ思っていた。
こういう形で使ってもらいたいなどと、武器側からの視点でしか考えたことがなかった。
これを使う人の気持ちなど、今まで一度も考えたことが無かったのだ。
彼の顔は見る見るうちに青ざめ、今にも泣き出してしまいそうだった。
chevがさすがに哀れに思ったのか、助け舟を出そうとしたがMiaが追い討ちをかけるようにさらに厳しい言葉を浴びせた。
「こんな物使えないわ。あなたの腕前を信じた私が間違っていたようね。」
彼女はぽいっと剣をその辺に放った。
ガシャーンと硬い物が床に打ち付けられる音が室内に響き渡る。
その音が吸い込まれるように止むと、場内は水を打ったように静まり返っていた。
あまりにも緊迫した空気感に耐え切れなくなり、chevが恐る恐る口を開いた。
「・・・そう言うけどよ、結構頑張ってると思うぜ・・・?」
Miaがチラリとchevを横目で見た。
「そうね、よく頑張ってるとは思うわ」
「ねえ、手を見せてくれる?」
暗く落ち込んでいるRichardが言われるがままに力無く手を差し出した。
彼女は優しくそれをとると、掌が上になるよう返した。
その手は以前見たものとは別物のようになっていた。
「・・・・ちょっと前まではあんなに綺麗な手をしていたのにね・・・・」
今では豆が何度も潰れ、ボロボロになっていた。
至る所にタコができ、皮膚も硬くなっている。
少し前まではMiaの手よりも美しく滑らかな手をしていたのに、今では見る影も無かった。
「痛くない?」
「・・・薬を塗ってるので大丈夫です」
「そう」
「でも、あまり無理はしないでね」
彼女は彼に痛みを感じさせないよう、極力優しく掌を撫でると手を離した。
「こんな手になっちゃったけど、まだやる気はある?」
「・・・やらせて貰えるんですか・・・?」
厳しい駄目出しを受け、てっきりもうクビになったものだとばかり思っていた。
「やる気があるなら続けて欲しいんだけど、どうかな?」
「ちゃんと使えそうな物がいくつかあるし、駄目な物はもう一度鍛え直せばいいんじゃない?」
「やっ、やります。是非、やらせて下さい。」

「良かった。それじゃあ、出来の良いものを数本引き取るから、仕事が一段落したら上に来てくれる?
支払いはその時に、ね。」
彼女はニコっと微笑んだ。

「はっ、はい!」
Richardがあまりにも嬉しそうに返事をするので、chevは思わず吹き出してしまった。
「ちょっとお前、なんだよその変わり様はよ。さっきまであんなに泣きそうなツラしてたのに」

「仕方ないでしょ、自己嫌悪にどん底まで落ち込んでいたんですから。泣きそうにだってなります・・・」
「全く、立ち直りの早い奴だな」
Richardはいつものように少し照れ臭そうに笑っていた。
---------------------------------------
二人は鍛冶場を離れ上の階に戻ると、一息つくため食堂で水を飲んでいた。

「・・・・さっきのギルマス、なんだかおっさんみたいだったな」
「ぶっ」
思わず水を吹きこぼしそうになるMia。
口の端から垂れてしまった水を拭いながら反論に出る。
「それ、どういう意味?私が親父臭いってこと?!」
「Azazelのおっさんに言動がよく似てたぜ」

「やだ、やめてよ。一体どこが似てるって言うのよ」
彼女はとても嫌そうにしている。

「どん底まで突き落として、最後に持ち上げてやる気にさせる。古いやり方だが、効果あるよな。
あんた散々おっさんに絞られてるんだろ?知らねー内に手口を覚えちまったんじゃねーのか?」
「長く一緒にいると色々似てくるっていうしな」
彼はニヤリと含み笑いを浮かべながら意味ありげにそう言った。
「嫌なこと言わないでよ。あのおっさんの言い草は気に入らないことの方が多いんだから・・・」
確かにおっさんとは比較的付き合いが長く、同じ家で暮らしているのだから一緒にいる時間も多い。
自覚はなかったが、chevに指摘されて先程の事を思い返してみると確かに言い方がAzazelのそれと似ていると感じた。
よりにもよって、一番似たくない部分が伝染ってきているなんて・・・。
彼女にとってはとてもショックなことだった。
「・・・ちょっと言い方キツかったかな・・・。悪いことしちゃったな・・・」
おっさんの言動とよく似ていたということは、かなりキツイ口調だった筈だ。
いつも嫌な思いをしている自分自身の気持ちを考え、Richardも同じような思いをしているのではないかと急に不安になった。

「気にすんな。あいつかなりやる気になってたぜ?うまくいったってことさ」
「俺はてっきり、わざとそうしたのかと思ってたよ」
「違うわよ。思ったことをそのまま言っただけよ」
「っつーことは、かなり重症だな」
「ああ・・・やめて・・・、マジでヘコむわ・・・」
Miaはげっそりとした様子でテーブルに手を着いた。
「なんだよ、あんなにおっさんに懐いてるくせに、なんだか嫌そうだな」
「別に懐いてなんかいないし、似たいとも思わないわよ。むしろ反面教師だと思ってるんだから」
「へー」
完全に棒読み調の”へー”。
Miaの脳髄にカチンコチンきた。
「何か御不満が?」
chevを威嚇しながら睨みつけた。
彼はおどけた様に「別にー」と言うと、逃げるようにその場を立ち去った。

Miaは内心グログロしながらコップの中の水を一気に飲み干した。
:::::::::::::::::::::::
-それから一ヵ月半後-
溜まっていた武器類の修理が無事終了した。
Richardの腕前もかなり上がり、その出来にMia達は満足気だった。
元々の戦士ギルド専属鍛冶屋の怪我も完治したので、約束通りの報酬が支払われると、
彼の仕事は完全に終わりを告げた。
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-つづく-
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大分間があいてしまいました(汗)
沢山やりたい事はあるのに、暑いと何もする気が起きないんですよね~><
私もやる気スイッチを押して欲しいです。
なんか写真もいつも同じような構図ばかりで困っちゃいます・・・。
クセで人物を右寄りにして撮影しちゃうみたいです。
イカンね~、センスが欲しいわ~(涙)
このお話も後少しで終わります。
もう少しお付き合い下さいませ。
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